16 ジェイクの話 1
「ユリアナの見た夢は……全て現実にあったことだよ。だけど……そうだったのか。そんなことが起きていたのか。やはりミレーユ本人にしか知り得ない事実を知っているということは、彼女の意志がまだ残されているということなのか?」
ジェイクは私をじっと見つめるも……その瞳は何故かいつものジェイクとは違う。
まさか、彼は……
「ジェイクさん……私は自分の知っている事実を全て話しました。今度は貴方の番ですよ。一体、貴方の正体は何者なのですか?」
「俺の名前はジェイク・ランカスター。『ランカスター』公国の公爵で、ミレーユ姫は婚約者だった」
「!」
その言葉に私は驚いた。
まさか、ジェイクが公爵家の人間だったなんて……しかもこのミレーユ姫の婚約者……?
それなら……
私はグッと歯を食いしばるとジェイクに尋ねた。
「それなら……さぞかし、ジェイクさんにとっては私の存在が邪魔でしょうね? 何しろミレーユ姫の身体をのっとってしまったようなものなのだから」
「……」
しかし、ジェイクは何も言わない。黙って私を見つめるだけだ。
「私の側にずっといたのは、この身体から私が出ていくのを待っていたのでしょう? わ、私だって別に好きでこんなことになったわけでは……」
必死で言い訳じみたことを言っている自分が情けなくなってきた。けれど、ジェイクが今まで私に良くしてくれて、ここまでついてきてくれたのはきっと私を監視するためだったのだ。この身体から出て行くのをずっと見張るために……
そのことが何故か無性に悲しくてたまらない。
思わずうつむくと、ジェイクが話しかけてきた。
「ユリアナ。ミレーユと俺は確かに婚約者同士ではあったけれども、それは単なる政略結婚であっただけでそこに二人の意志は無かったんだ。君と王子が政略結婚であったようにね」
「ジェイクさん……」
「ミレーユには三人の兄と二人の姉がいて、彼らは全員正妃から生まれた。けれども彼女だけは違った。実は『モリス』国には強大な魔力を持つ女性が王宮魔術師として仕えており、国王はその力を引き継ぐ子供が欲しかった。だから……無理やり……」
後のことは聞かずとも分かった。
「それでは、その女性がミレーユの母親だったのですか?」
「そうだ。ミレーユの母親は彼女を出産したときに……亡くなってしまった。生まれてきたミレーユには母親と同様、強い魔力を持っていたことが分かったらしい。そのため、恨みを買ってしまったんだ。正妃と……その子供たちに」
ミレーユは姫でありながら不遇な立場にあったなんて……彼女が気の毒に思えた。
「元々ミレーユの母親は平民出身ということもあったし、国王はミレーユではなく、彼女の持つ魔力だけに興味があった。だから一人、離宮で暮らすように命じたんだ。そして、『モリス』王国と同盟関係にあった『ランカスター』公国の俺と、婚約することになったんだ。互いの関係を強めるためにね」
そこでジェイクは言葉を切った――
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