15 夢の告白

「俺が何者かだって?」


ジェイクが首を傾げて私を見る。


「はい、そうです」


「俺の名前はジェイク。『ナース』地区の川沿いに一人暮らしをしているただの平民だ……ってその顔。全く信用していない顔だな?」


ジェイクは何がおかしいのか、顔に笑みを浮かべている。


「ジェイクさん……私は本気で尋ねているんですよ? ふざけないで下さい」


真剣な顔でジェイクを見つめた。


「悪かったよ。ユリアナは真面目に尋ねているというのに……すまなかった。ついユリアナを見ていると、彼女のことを思い出してしまってね。君と彼女は外見は同じでも中身は違うというのに……」


その言葉ではっきりと確定した。

やはりジェイクはこの身体の持ち主のことを知っているのだ。


「その彼女というのは、ミレーユ姫のことですよね?」


「否定はしないよ。だが……何故、名前を知っているんだ?」


「それは以前、ジェイクさんが私を見て『ミレーユ』と名前を口にしたからです。だけど、それだけではありません。……夢を見たからです」


「夢……?」


その時――


「ジェイクさん。ユリアナ様と大事な話があるんですよね? 御者なら俺が代わりますよ。二人で後ろの荷台で話をしてみてはいかがですか?」


いつの間にか、私達の背後にラルフが立っていた。その隣にはエドモントも一緒だ。


「……分かりました。それではお願いします」


ジェイクはラルフに手綱を手渡すと、私に声を掛けてきた。


「ユリアナ、それじゃ荷台で話をしよう」


「はい」


ジェイクの目を見つめて、私は頷いた――




「それじゃ、ユリアナ。夢を見たと言っていたけれども……一体どんな夢を見たんだ? 教えてくれ」


荷台に移動すると、早速ジェイクが尋ねてきた。


「はい、分かりました。その代わりジェイクさんも包み隠さず私の質問に答えてくださいよ?」


「分かってる。自分の答えられる範囲内であればどんな質問にも答えるよ」


「約束ですからね?……では夢でみたことをお話します」


そして私は自分が見た夢の話をジェイクに伝えた。


闇夜に包まれた見覚えのない場所で私は右手に血に染まった剣を握りしめていたことを。血溜まりの床に倒れていた人物は自分の父親であり、その直後に駆けつけてきた近衛兵達に見つかり自分が犯人にされてしまったこと。


国王陛下殺害容疑で捕まりそうになったところを炎の魔法で撃退し……城から逃げ出した夢の話をジェイクに伝えた。


ジェイクはその間、一度も口を開くこと無く真剣な眼差しで話を聞いていたが……やがて深い溜め息をついた――

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