13 宣戦布告?
「それでは、その少女は我々の味方をするということか?」
赤毛の大男がジェイクに尋ねる。
彼は確か、兄の直属の部下だった騎士だ。
「ええ、そうです。何より、ユリアナ王女様はもう二度と『モルス』国に戻ることは出来ないのですから」
「それは一体どういう意味だ?」
「我らに分かるように説明してくれ!」
「そうだ! 早く教えろ!」
口々に騎士たちは訴える。もはや、エドモントもラルフも口を挟む機会を失っていた。
「ええ、いいでしょう。何故ならユリアナ様は国王陛下暗殺の罪をかけられて、国を追われてしまったからです!」
え!?
その言葉に耳を疑う。もっとも驚いたのは私だけでは無かった。その場にいる全員が目を見開いている。そしてジェイクの演説は続く。
「元々この国は『モルス』国とは不可侵条約を結んでいました。けれど、『タリス』王国の支配下に置かれてしまったせいで戦争が起こってしまった。彼らは『モルス』を自分の国の支配下に置くために戦争を起こしたのはご存知ですよね? しかもそれだけではない。こちらにいるユリアナ様を手に入れる為でもあったのです」
更にざわめく騎士たち。
「ユリアナ様が強力な魔法使いであることは『タリス』の国王にも知られていました。そこでタリス国王は間者を送り込み、国王を暗殺させました。あたかもユリアナ様の仕業であるかのように。そしてタイミングよく駆けつけてきた近衛兵達に見つかり、追われることになってしまった。そこで元々ユリアナ様の護衛騎士だった俺が保護して、偶然出会ったエドモント氏たちと合流してここまで来たのです」
ジェイクの話は……作り話だったのかも知れないが、私は半分嘘で半分は事実としか思えなかった。
「ユリアナ様は『タリス』国に恨みを抱いています。当然あなたがたもそうですよね? なので一緒に手を組んで『タリス』国と、手を貸した『アレス』国の王族に報復しませんか!」
驚くべきことに、ジェイクはタリス国とアレス国の王族に宣戦布告したのだ。
事情をよく知るエドモントとラルフは呆気に取られた顔をしていたが、つい先ほどまで牢屋に捕らえられていた彼らは違う。
「そうだ……全てタリス国のせいだ」
「おのれ……よくもベルンハルト家の方々に……!」
「我らを十年も閉じ込めたシュタイナー家に報復するのだ!
ジェイクを中心に盛り上がる囚われていた騎士たちを、私はただ呆然と見つめるだけだった。
ジェイク……彼は一体何者なのだろう?
一体、どこまでが真実なのか……彼に対する疑念が大きく膨らむのだった――
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