11 遅れて出てきた人々
「な、何だ! 今の音は」
ジェイクが驚き、私達は背後を振り返った。すると刑務所の鉄格子の窓から黒煙が吹き出している。
「煙が……!」
「なにか爆発でもしたのか!?」
その直後――
刑務所からものすごい騒ぎ声が起こった。何かが破壊されるような音まで響き渡ってきた。
「これは何か起こったな……ユリアナ、ここは危険だ! もっと目立たない場所に馬車を移動しよう!」
ジェイクが御者台に乗り込むと、手綱を握りしめて馬車の移動を始めた。
「あの林の中に馬車を隠そう。巨大な岩もあるから隠れるのに丁度良いだろう」
「そうですね。あまり刑務所から離れるわけにはいきませんから」
何しろ、あの刑務所にはエドモントとラルフがいるのだ。それにあの巨大な爆発音……あれはきっとエドモントの仕業だ。
恐らく、手榴弾を持っていたのだろう。それを投げつけて牢屋を破壊したのかもしれない。
「とにかく、あの二人を信じて待つしか無いだろう」
巨大な岩陰に馬車を移動させたジェイクはそこで馬の動きを止めた。
「はい、そうですね」
その後、私達は遠くから刑務所の様子を伺っているとやがて中から大勢の囚人たちが走り出てきた。彼らは自由になった喜びからか、雄叫びをあげながら思い思いに散り散りに走り去っていく。
「すごい数の囚人だな」
ジェイクが唸るように言う。
「ええ、そうですね……」
あの様子ではエドモントは全ての牢屋を破壊したのかもしれない。恐らくベルンハルト家の騎士たちを助けるために、あえて全ての囚人を脱走させたのだろう。
全員を脱走させてしまえば、追手がかかる可能性も低いだろう。
もっとも、この戦時下でわざわざ脱走した囚人を再び捕まえようとするかどうかも分からないが。
「それにしても……エドモントとラルフはどうしたのだろう? 中々出てこないな」
ジェイクは余程目が良いのだろう。これほど刑務所から離れた場所に隠れているのに、見えているようだ。
私達は辺りを警戒しながら、囚人たちの脱走していく様を見守っていた。
やがて……
「あ! 出てきたぞ!」
それまで静かに刑務所の様子を見届けていたジェイクが声を上げた。見ると、二人の人影の背後には多くの人影が見える。
その数は少なくとも二十人以上はいるようにみえる。
「ま、まさか……彼らは……」
ここからでは顔の判別も出来ないので確認は出来ないが、その集団は先程馬車を隠していた場所に向かって移動している。
「多分、仲間たちなのだろう。エドモントとラルフの姿があるからな。ひょっとすると一番最後に刑務所から出てきたのかもしれない。よし、行ってみよう。」
「はい」
頷くと、ジェイクは手綱を握りしめ、彼らの元へ馬車を走らせた――
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