3 現れた二人
「よし、二人共……手を頭の上に組んだならゆっくりとこちらを向け。少しでも妙な動きをした場合は容赦なく撃つからな」
私達は言われるままにゆっくりと背後を振り向き……私は目を見開いた。
そ、そんな……!
こちらに銃を構えて向けていた男は二人だった。そして私は彼らを知っている。何故なら二人は私が率いる部隊の騎士だったからだ。
一番最年少で、まだ騎士になりたてだった新人のラルフ。そして副隊長を務めていたエドモント……。
十年経過していても、すぐに分かった。それだけ私は自分の部隊の騎士たちとは親しい間柄だったからだ。
良かった……二人は無事だったのだ……。思わず目尻に涙が浮かび、ジェイクが不思議そうな目で私を見つめてくる。
「お前たち……そのまま動くなよ」
「動けば撃つぞ」
エドモントとラルフが銃を構えたままこちらにゆっくりと近づいてくる。
「くっ……」
ジェイクは唇を噛み締めたまま二人を睨みつけているも、私の中にはもう彼らに対する恐怖心が薄れていた。危機的状況にあるのは変わりないが、この再会を密かに喜んでいる自分がいた。
彼らは近距離まで近づいてくると、エドモントが銃を向けたまま尋問してきた。
「お前達……一体どうやってここまで辿り着いた? ここはベルンハルト公爵家の所有する隠れ家と知ってやってきたのか?」
「ベルンハルト公爵家だって……⁉」
その言葉に驚いたかのようにジェイクが私を見つめる。
「ほう……ベルンハルト公爵家のことを知っているのか? なら公爵家の方々がどうなったのかも知っているのだな?」
エドモントが銃口をジェイクに向ける。このままでは彼が……!
「待って下さい! ここへ案内したのは私です! 尋問なら……私にして下さい!」
私はエドモントに訴えた。
「何? 女……お前が? なるほど……それならお前から話を聞いたほうが良さそうだな」
エドモントはニヤリと笑い、今度は私に銃口を向ける。
「そこの女。それではどうやってこの隠れ家を見つけ出したのか……余すこと無く全て話せ!」
そしてガチャリと引き金を引いた。
どうしよう……?エドモントは本気だ。彼は本気で引き金を引こうとしている。
うまくいくかどうかは分からないが、こうなったら方法はたった一つだけ……。
彼を信じるのだ……!
「分かりました。お話致しますが……その代わりお願いがあります」
「願いだと?侵入者の癖にどこまでも図々しい女だな……余程さっさと死にたいと見える」
ニヤリと笑うエドモント。そして先程からラルフはただ黙って見つめているだけであった。
「それほど難しいお願いではありません。ただ……貴方と二人だけで話をさせてもらいたいのです」
「!」
その言葉に驚いたかのようにこちらを見つめてくるジェイク。
「ふん……一体どういうつもりか分からんが……いいだろう。望み通り話を聞いてやろう」
エドモントは頷くと、次にラルフに視線を移した。
「ラルフ」
「はい」
「その男はお前が見張っていろ。いいか?」
「分かりました」
ラルフは頷くと、ジェイクを再び睨みつける。
「よし、ならこの奥に別に部屋がある。そこに移動するぞ」
ジェイクは私に銃口を向けながら不敵な笑みを浮かべた――
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