弱虫な異能力者

@motizuki_sugu

プロローグ, 日常は唐突に

いつも通り学校に行って、いつも通り勉強をして、いつも通り部活をして。帰り道には今日の夜ご飯はカレーがいいな、なんて考えるのが日常だった。


だが、家のドアを開けたらそこには、いつもの日常は既に存在していなかった。


血溜まりに横たわる父と母。その近くには妹が八歳の誕生日に貰い、お気に入りだとしきりに話していた髪飾りが無造作に落ちていた。


その光景に、少年はがくりの膝をついた。血まみれの髪飾りを拾う手は震え、涙一つ流れていない様子から、少年がまだ現実を受け止めきれていないことを物語っていた。

少年は拾った髪飾りの近くにもうひとつ何かが落ちていることに気がついた。


「SAI…」


少年は掠れた声で呟く。

落ちていたのはバッチだった。バッチには大きく"SAI"というロゴが書かれている。


少年はバッジと髪飾りを握りしめ、家を出た。

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