第8話 ひたすら石を投げる!

 そんなことを思いつつ、再び歩いていると、


『アリスちゃん、右の方のあれミニラビットじゃね?』


 言われる右の方を見てみると、草原の中に白いやつが見える。

 小さい動物みたいな感じで動いている。

 白い小さな動物、


「確かにミニラビットっぽいね」


 初めて見る魔物、だけど、思ってたよりも恐怖感はない。

 というのも、見た目がそのまんまウサギだからだ。

 正直、かわいいとしか思えない。

 撫でたくなるけど、


「あ、見た目は完全にウサギっぽいけど、角がついているんだ」


 近づいて見ると、それが私が知っている動物とは違うことがわかった。


「あれに突かれると痛そう」


 鋭いとは言わないけど、ちょっとしたドリルみたいになっていて、痛そう。

 貫かれたりはしないと思うけど。


『まぁ、倒す意味はあんまりないけどね』


 だよね、ちょっと離れているし、あれはスルーかな?


『いや、ちょい待って、ミニラビットの影に隠れているけどあれ素材じゃね?』


 言われて気がついた。

 ミニラビットがしゃがんでいるその真下にキラリと光るものが見える。

 確かに、あれは素材の光だ。


『つまり倒さないと素材は取れないと』

『よくあるやつだね』

『まぁ、ミニラビットなら優しい方』

『アリスちゃんどうする?』


 うーん、正直、ウサギっぽいミニラビットに手を出すのは気が引けるんだけど。


『倒して運が良ければ肉落とすで』


 肉!


『俺も食べてみたけど、鶏肉っぽい感じだったな』


 肉と聞いてテンションが上った。

 思い返すと、アリスの記憶だとここ最近肉を食べた記憶がない。

 体がタンパク質を欲しているのだ。


『防具ないけど、どのくらいダメージくらうんだろ?』

『ミニラビットは強くないけど……、流石にレベル1の生産職が戦うことは想定してない……はず?』

『なるべくダメージくらわない方向のがいいんじゃね?』


 だよね、一応私としては、ゲームではなく現実だし、痛い思いはしたくない。

 となると、


「石をいっぱい投げる!」


 さっき作った投石が役に立つ!


『ミニラビットのHPは10だから10個当てれば倒せるな』


 なるほど!

 それじゃあ、投石を構えて、ピッっと投げる。

 ……実際にはひょろひょろだけど。


『投げる力ってダメージに依存したっけか?』

『しなかったはず?』


 なんてコメントを横目に見つつ、ヒョロヒョロの投石はウサギにあたった。

 しかし、ミニラビットはなんの反応もしない。

 あれ? 効いてない?


『いや、多分、ダメージは受けてる。索敵範囲外だから認識しないんだろ』

『ミニラビットの索敵範囲めっちゃ狭いんだよな』

『ここからなら多分投げ放題だよ』


 なるほど、いいことを聞いた。

 だったら、ひたすら投げまくるだけだ!

 ウサギに石を投げるのはちょっと気がひけるけど、ミニラビットも反応がしないから少しは気が楽だ。

 そして、石をたっぷり使ってなんとかミニラビットを倒すことができた。


『半数は外してたな……』

『ま、まぁ距離もあったし、的も小さいから』

『スキル補正なしだからな』

 なんとか20個消費してミニラビットを倒すことができたのだった。


 よし、邪魔なミニラビットも倒したことだし、素材確保だ!

 ここでも、さっきと同じく、5個の薬草を採取することができた。

 倒した価値があったね!

 でも、残念ながら肉はでなかった。

 倒し方もわかったし、残りの石の数的にもう一匹くらいミニラビット倒せるから、見かけたらやってみようかな。

 魔物を倒した高揚感とともに、街の周回に戻る。

 結果的には、街を一周して合計5箇所から25個の薬草を入手できた。

 なかなかの結果に私も上機嫌だ。


『結構いい感じ?』

『うん、結構運よかったと思うよ』


 視聴者さんから運がよかったのコメントを頂いたのでホクホクだ。


『でも、惜しいなぁ』


「うん? 何が?」


『後一個あればレベル上がったのにな』


 あー、そういうこと。

 確かに、私の残り経験値は27だったはず。

 初級ポーションを25個作ったとしたらボーナスを合わせてギリギリ1足りない。

 1足りない現象! そんなのに悩まされるなんて!

 そう思いつつ、ステータスを見てみると。

 うん?


「あれ?」


『うん? どしたん?』

『トイレか?』

『アリスちゃんはトイレになんか行きませんんん!』


 セクハラコメントはひとまず無視して、


「えっと、経験値27だと思ってたんだけど、26だったからレベル上がるなぁって」


 ステータスに載っていた数字は26になっていた。

 あれ? 27だと思ってたんだけど、勘違いだったか。


『なんだ計算ミスか』

『えっ? そんなはず?』

『いや1回目の時はたしかに27だったはず』

『だよな、そこで計算したのも覚えてるわ』


 そのコメントは私も覚えてる。


『ちょっと巻き戻して見て見たけど、たしかに錬金終わって街を出る前は27だったわ』


 あ、そっか、視聴者さんは巻き戻しとかできるんだ。って、えっ?


「それじゃあ、どっかで1経験値手に入れたってこと?」


 どこで?


「魔物を倒したから? かな? あのミニラビット」


『いや、言ったように生産職は生産行為でしか経験値得られないから……』


 あ、そっか。でも、そしたら、


「どうして?」


 聞いてみるも、


『わからん……』

『わからん……』

『わからん……』


 わからんコメントで埋め尽くされてしまった。

 うーん、視聴者さんがわからないなら、私はそれ以上わからないなぁ。


『ひとまず、検証してみるからアリスちゃんはレベルあげようか』

『検証ニキあざーす』


「あ、そうだね、これでレベル2になれるよ」


 まぁ、でも今はレベルが上がることを喜んでおこうかな。

 難しいことは視聴者さんにお任せ!

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