10月編

幕間 彼女の独白

 好きとはいったいなんだろう。


 嫌いとはいったいなんだろう。


 誰もが当たり前のように口にする――好き。


 誰もが当たり前のように口にする――嫌い。


 好きにもいろいろ種類があって。

 嫌いにもいろいろ種類があって。


 好きの反対は?

 嫌いの反対は?


 感覚としてこの世に存在している以上、一つ一つを細かく説明できる人間なんて誰もいないのだと思う。


 では、自分が。


 彼に抱くこの『好き』と。


 彼に抱くこの『嫌い』と。


 二つの感情の違いは、いったいどこにあるのだろう。


 なにが違くて、なにが同じなのだろう。


 感情というのは……いつだって、本当に難しい。


 友情とか。

 愛情とか。

 親情とか。

 人情とか。


 一言で『感情』といっても数多の意味が存在する『想い』のなかで、自分はいったいなにを抱えているのだろう。


 彼女のような純粋さ。

 彼女のような明るさ。

 彼女のような真っすぐさ。


 捻くれた自分には装備できない、眩しい武器たち。


 自分にもいずれ――それらを理解できるときが来るのか。向き合えるときが来るのか。


 まだまだゴールは遠い、道の半ばで。


 ずっとずっと先にいる――あのラスボスを目指して。


 自分だけの足で、確実に歩き続ける。


 例え理解できなくても、理解したいから。


 例え知ることができなくても、知りたいから。


 例え出会えなくても、出会いたいから。


 ――なんて、自分は……自分だけはそう思っていた。


 すべてを理解するとき。


 自分のなかの想いを知るとき。


 やっと、辿とき。




 それは、すべてが『終わった』ときだなんて――





 今の自分は。



 今の――わたしは。


 

 思いも……しなかった。



 いよいよ幕が上がる。


 上がって、しまう。


 気付かぬうちに忍び寄っていた――


 終わりへと向かう、幕が。


 あの頃にはもう……。


 戻れない。

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