閑話30 朝陽志乃・誕生日LINE①【お勉強組!】
九月二十三日。零時にて。
青葉
『おらおら! てめぇら起きやがれ! 今日という今日は寝ているヤツいたら叩き起こすぞ!』
青葉
『なんて言ったって今日はなぁ!』
晴香
『志乃ちゃん! お誕生日おめでとー!』
ひなた
『志乃! 誕生日おめでとおおおおお!!(,,σ˃ᴗ˂,,)σ』
月ノ瀬玲
『おめでと、志乃』
なぎ
『おめでとう志乃さん』
星那
『おめでとう。志乃』
朝陽司
『俺はもう日付が変わる瞬間に直接言ってきたけど……改めておめでとう、志乃』
朝陽志乃
『わぁぁ……!』
朝陽志乃
『ありがとうございます皆さん! とっても嬉しいです!』
晴香
『志乃ちゃんも十六歳かー! 私と同い年だ!』
月ノ瀬
『私と司もそうね』
ひなた
『年上になっちゃった……! 先輩って呼ばなきゃ!』
月ノ瀬
『なら私たちにはタメ口ね』
晴香
『おー! 志乃ちゃんのタメ口は新鮮かも!』
朝陽志乃
『そ、そんなことできないですよ!』
青葉
『え、あ……あえ……』
星那
『昴。キミは志乃になにか言うことないのか?』
なぎ
『たしかに。ちゃんと言ってないのあんただけじゃん』
青葉
『えぁ、え……』
朝陽司
『昴なら一番早く言ってくれると思ったのにな』
ひなた
『先輩最低ですよ! ちゃんと言ってあげてください! 志乃が泣いちゃいますからね!?』
朝陽志乃
『泣かないよ!?』
青葉
『志乃ちゃん!!!!!!』
朝陽志乃
『は、はい!!』
青葉
『誕生日おめでとう!! 生まれてきてくれてありがとう! これからもよろしく!』
朝陽志乃
『ありがとうございます……』
朝陽志乃
『えっと、ちょっと照れちゃいますね……』
月ノ瀬玲
『あら? 私たちのときとちょっと反応違くないかしら?』
朝陽志乃
『そんなことないですよ……!?』
ひなた
『姉御、それは触れないであげてください』
晴香
『うんうん。乙女心ってやつだよ姉御』
月ノ瀬玲
『ふふ、了解よ。あと姉御はやめなさい』
朝陽志乃
『も、もう先輩たちまで……! からかわないでください!』
朝陽司
『志乃ももう十六歳かぁ。初めて会ったときは十二歳だったのにな』
青葉
『だな。この四年でずいぶん成長したと思うぜ』
青葉
『うんうん。いろいろ成長した。ぐへへ』
なぎ
『川咲さん』
ひなた
『はい留衣先輩。バッチリスクショしておきました。あと証拠として提出するだけです』
青葉
『あれぇ???』
星那
『志乃、身の危険を感じたらすぐに言ってくれ。知人の警察関係者にすぐ知らせる』
朝陽志乃
『分かりましたっ!』
青葉
『志乃ちゃん違う。そこ分かりました違う』
朝陽志乃
『変なこと言う昴さんのせいです』
青葉
『ほんまごめんて。全部ワイのせいや。出来心だったんや』
なぎ
『急なエセ関西弁笑うからやめて』
月ノ瀬玲
『絶対反省してないわね』
晴香
『じゃーせっかくだから志乃ちゃん!』
朝陽志乃
『なんですか?』
晴香
『十六歳の目標みたいなものをどーぞ!』
朝陽志乃
『えっ!』
星那
『ほう。それは私も聞いてみたいものだ』
朝陽司
『俺も気になる』
朝陽志乃
『兄さんまで!?』
ひなた
『おー! 言っちゃいな志乃!』
青葉
『期待』
なぎ
『待機』
朝陽志乃
『目標……』
晴香
『うんうん! なんでもいいよ!』
朝陽志乃
『うーん……』
晴香
『あ、でも全然! 半分冗談だから無理して答えなくていいよ!』
星那
『安心したまえ。キミが考えている間に司が面白い話をしてくれるはずだ』
朝陽司
『え』
月ノ瀬
『そうね。お兄さんが時間稼ぎしてくれるわよ』
なぎ
『これは期待できそう。朝陽君のお笑いセンスはとんでもないから』
朝陽司
『渚さん?』
青葉
『おら。早く喋れよ。志乃ちゃんが考えてんだろうが』
青葉
『まさかお前、妹のために場を繋ぐトークすらできないの? プププ』
ひなた
『うわー。どうせ自分に振られてないからって内心めっちゃ喜んでるんだろうなー』
なぎ
『簡単に想像できる』
青葉
『解説やめい』
朝陽司
『これは中学生の頃の話なんだけど』
なぎ
『お』
星那
『司がそういう話をするのは新鮮だな』
朝陽司
『数学の先生に飯沼先生っていう美人の先生がいて』
ひなた
『懐かしい!』
朝陽志乃
『懐かしいね』
青葉
『普通に志乃ちゃんが聞く側に回ってて面白い』
青葉
『あの先生めっちゃ美人だったよな。男子生徒に人気あったし』
晴香
『やっぱ学校に一人そういう先生っているよね!』
なぎ
『わたしたちの中学にもいたね』
月ノ瀬玲
『その先生がどうかしたの?』
朝陽司
『その先生に頼まれて、授業とかに使う資料を別の教室に運んでたことがあってさ』
朝陽司
『俺と飯沼先生、あとは昴の三人だったんだけど』
青葉
『ん?』
朝陽司
『なぜか恋バナみたいな話が始まっちゃって。その延長線上で俺たちに聞いてきたんだよ』
朝陽司
『好きな女の子とかいないのかーって』
晴香
『ちょっとワクワクしてきた!』
朝陽司
『いないですねーって答えたら、今度は昴にも同じ質問をして』
青葉
『あ、まずい』
青葉
『司。その話はいけない』
青葉
『待とうか』
朝陽司
『昴の文字だけぼやけてて見えないな』
なぎ
『分かる』
青葉
『分かるな』
青葉
『煽った俺が悪かったから! 一回やめておこう! な!?』
なぎ
『それでなにがあったの』
ひなた
『めっちゃ気になるんですけどー!』
青葉
『いや全然! まったく面白くないから!』
青葉
『ほら志乃ちゃん! 十六歳の目標をどうぞ!』
月ノ瀬玲
『分かりやすく逃げたわね』
星那
『逃げたな』
朝陽志乃
『兄さん』
朝陽司
『どうした?』
朝陽志乃
『それでどうなったの?』
青葉
『ダメだ全然話聞いてねぇ!!』
なぎ
『笑う』
青葉
『司、ほら、俺たち親友でしょ? ね? ね??』
青葉
『今度めっちゃ美味いカレー作るから! 最近新レシピを編み出したのよあたし!』
朝陽司
『本当か!?』
青葉
『ほんとほんと。すばる嘘つかない』
朝陽司
『なら仕方ないな! この話はここまでということで!』
朝陽司
『約束だからな昴!』
青葉
『おうヤクソク!!』
月ノ瀬玲
『アンタ、カレーに弱すぎない?』
晴香
『結局どうなったんだろう……』
ひなた
『え~! 気になる気になる~!』
朝陽志乃
『兄さん』
朝陽司
『ごめん志乃、そういうわけだから……』
朝陽志乃
『それでどうなったの? って聞いたんだけど』
朝陽司
『え、いやだから……』
朝陽志乃
『どうなったの?』
朝陽司
『おもむろに飯沼先生にプロポーズして速攻で振られて、本気で心配されて担任に報告されてた』
朝陽司
『そのあと担任に呼び出されて一時間くらい事情聴取されてた。説教じゃなくて本気の心配ですごく親身になって話を聞かれてた』
朝陽司
『で、恥ずかしさに耐えられなくなった昴が最後にお得意の土下座して終わった』
朝陽司
『流石に不憫だったから帰りにファーストフード奢って帰った』
朝陽司
『以上です』
※青葉 がグループを退室しました。
※朝陽志乃 が 青葉 をグループに招待しました。
月ノ瀬玲
『ごめん声出して笑ったわ』
なぎ
『お腹痛い』
晴香
『ごめん私も(笑)』
ひなた
『志乃の招待はやすぎ笑』
星那
『当時の様子を容易に想像できるのがまた面白いな』
朝陽志乃
『昴さん』
青葉
『はい』
青葉
『すみません』
朝陽志乃
『そういうの良くないよ。やめよう?』
青葉
『はい。誠に申し訳ございませんでした』
青葉
『あの。ちなみにそういうのってどこを指して……』
朝陽志乃
『全部』
青葉
『はい全部ですね承知いたしました』
朝陽志乃
『もう……』
青葉
『司。カレー無しな』
朝陽司
『!!!!!?????』
なぎ
『カレーへの執念がすごい』
ひなた
『先輩カレー大好きですからねー』
朝陽志乃
『えっとそれで、目標でしたっけ』
晴香
『あ、うん!』
月ノ瀬玲
『決まったの?』
朝陽志乃
『はい』
朝陽志乃
『その……』
朝陽志乃
『みなさんのような素敵な女性になりたいな……って』
晴香
『好き』
月ノ瀬玲
『好き』
ひなた
『好き』
なぎ
『好き』
星那
『好き』
青葉
『おいお前の妹が急にハーレム築いてるぞ』
朝陽司
『志乃。お前はもう今のままで十分素敵だよ』
晴香
『素敵』
月ノ瀬玲
『素敵』
ひなた
『素敵』
なぎ
『素敵』
星那
『素敵』
青葉
『やばいって。危ない団体みたいになってるって』
朝陽志乃
『恥ずかしいのでやめてください……!』
晴香
『ごめん志乃ちゃんが素敵すぎて! なんでそんな嬉しいこと言ってくれるのー!』
月ノ瀬玲
『アンタは十分魅力的よ。だからアンタのまま成長していきなさい』
月ノ瀬玲
『でも気持ちは嬉しいわ』
朝陽志乃
『姉御……』
月ノ瀬玲
『志乃??』
晴香
『時間も遅いしこのあたりにしておこっか!』
なぎ
『そうだね』
星那
『私は作業に戻るとしよう』
星那
『志乃、改めて誕生日おめでとう』
ひなた
『おめでと!』
なぎ
『おめでとう』
晴香
『おめでとう!』
月ノ瀬玲
『おめでとう。また学校で会いましょう』
青葉
『おめでとう志乃ちゃん』
朝陽司
『よかったな、志乃』
朝陽志乃
『うん……!』
朝陽志乃
『本当にありがとうございました!』
青葉
『あれ。これ最終的に俺が恥ずかしい思いしただけじゃね? あれ???』
なぎ
『おつ』
× × ×
「本当に優しい人たちだなぁ……」
優しい言葉の数々に頬がゆるんでしまう。
まさかこんなにお祝いしてくれるなんて思わなかった。
眠くて寝ちゃいそうだったけど、頑張って起きててよかったなぁ。
トーク画面を閉じずに、先ほどの会話を再び上から見返した。
いつも明るくて、元気で、楽しくて。
そんな素敵な人たちに出会えて本当に良かった。
十六歳になって、また一つ年を重ねた。
ずっと一緒にいてくれた兄さんや昴さんたちを支えられるように、もっと成長しなきゃ……!
「……昴さん」
ふと、名前を呟く。
兄さんが話していた学校の先生の件を思い出して、思わず頬が膨らむ。
飯沼先生はたしかにとても美人な先生だったけど……。
まさかそんなことをしてたなんて……。いつも変なことばかりしてるんだから。
あの人らしいといえば、らしいけれど。
「まだ……起きてるのかな」
特に意識したわけではないのに、気が付けば昴さんとのトーク画面を開いていた。
別にメッセージを送るわけでもないのに、ただボーっとトーク履歴を見返して……ちょっと胸が温かくなる。
お話したいな――
ちょっとくらいはいいよね――?
「だって……今日は私の誕生日だもん」
ドキドキする気持ちを抱えながら、私は昴さんへとメッセージを送った。
『まだ起きてますか?』
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