閑話8 夜LINE⑧【蓮見晴香・渚留衣】

午後八時にて。


なぎ

『晴香、ごめん』


晴香

『えっ! いきなりどうしたの?』


なぎ

『今日の班のこと。まさかわたしが朝陽君と一緒になっちゃうなんて……』


晴香

『あぁそのこと? それは仕方ないよ。先生が決めたんだし』


なぎ

『そうだけど……』


なぎ

『いっそのこと変えてくれるように先生に言おうかな』


晴香

『それは……さすがに無理じゃない?』


なぎ

『だよね』


なぎ

『はぁ……ほんとごめん晴香』


晴香

『そんなに謝らないでよー!』


なぎ

『でも朝陽君と一緒になれなくて寂しいでしょ?』


晴香

『……その聞き方はズルいと思います』


なぎ

『ふふふ』


晴香

『もう。たしかにその、ちょっとはそういう気持ちあるけど……』


なぎ

『ん、ちょっと?』


晴香

『ねぇるいるい?』


なぎ

『なんでもありませーん』


晴香

『まぁ残念な気持ちはもちろんあるけど、それより私嬉しくて』


なぎ

『嬉しい?』


晴香

『うん。るいるいが朝陽くんと同じ班になってくれて嬉しいなって』


なぎ

『え』


なぎ

『それってどういう』


晴香

『だってるいるい、もし朝陽くんがいなかったら大変だったでしょ?』


なぎ

『そんなことないと思います』


晴香

『ほんとに~? みんなと上手く喋れる?』


なぎ

『バカにしすぎ』


晴香

『まぁとにかく、誰かしらと一緒になってくれてよかったよってこと!』


なぎ

『わたしは心配だけどね』


晴香

『なにが??』


なぎ

『わたしが見てないところで青葉に変なことされないかとか』


晴香

『あー青葉くん? 大丈夫だって。玲ちゃんもいるし、そもそも青葉くんはそんな人じゃないよ』


なぎ

『ほんとに? 変にからかわれたりしてない?』


晴香

『えー別に』


晴香

『あ、からかわれた』


なぎ

『よし、処す』


晴香

『いやいや大丈夫だから! ほら! お返しに班長にしてやったぜ~! だよ!』


なぎ

『あー、だからアイツが班長なんだ。青葉ずっと文句言ってたもんね』


晴香

『ふっふっふ。たまに私もやり返すのです』


なぎ

『なにかあったら言ってよ?』


晴香

『ありがと。でも青葉くんのおかげで楽しい班になりそうかも。そこはさすがって感じ』


なぎ

『認めるのはなんか癪』


晴香

『るいるいも困ったことがあったら言ってよ? すぐ駆け付けるから!』


なぎ

『任せて。朝陽君に晴香のいいところいっぱい話しておく』


晴香

『そんなことしてたらほんとに駆け付けるよ!?』


なぎ

『ま、合宿で朝陽君と距離を縮められたらいいね。応援してる』


晴香

『あのさるいるい』


なぎ

『ん?』


晴香

『あ』


晴香

『楽しみだね! 合宿!』


なぎ

『? うんそうだね』


晴香

『じゃー私そろそろお風呂入ってこようかな。わざわざ連絡ありがとね』 


なぎ

『こちらこそ。おやすみ晴香』


晴香

『おやすみ~!』


 × × ×


「あぶなかった……」


 ホッと一息。


 うっかり変なことを言いそうになっちゃった……。

 

 ベッドに身を投げ、天井を仰ぐ。


「嬉しい……かぁ」


 あのね、るいるい。


 るいるいが朝陽君と一緒の班になってくれて嬉しいって気持ちは本当なんだ。

 

 そうじゃないと、るいるいがみんなと上手く話せるかどうかすごく心配だし。

 

 朝陽くんでも、青葉くんでも、玲ちゃんでも……。


 るいるいが話しやすい相手が一人でも一緒にいてほしいなって思ってた。


 多分……『コミュニケーション』っていう意味だけであれば青葉くんがいいんだろうけど……。

 それはそれで喧嘩が絶えなそうだなぁ……。


 だけどね。


 一緒なのが朝陽くんでよかったって思ってるよ。

 

 もちろん、その……るいるいとも朝陽くんとも一緒の班になれかったのは……寂しいけど。

 それでも、今回は寂しい以上に……嬉しい。


 思わず、スマホを握る手に力が入る。


 だって。


 だってさ。


 るいるいは――

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