第8話
そして翌る日、とうとう香奈の人生の分岐点になるかもしれない進路相談がやってきた。窓の外を見るとしとしとと雨が降っていた。進路相談では担任と副担任がそれぞれするようだ。女子生徒は女性教師が、男子生徒は男性教師がするようになっている。理由は、中学生という年頃から同性の方が話しやすかったり、相談をしやすいと考えられているからだそう。ちなみに、生徒によって、担任がいいとか副担任がいいとか生徒それぞれが選べる。
香奈は廊下で窓の外を眺めながら、以前の友人たちとの会話をぼんやりと思い出していると、彼女の前に進路相談をしていた生徒が進路相談室から出てきた。少しすると女性教師の「次の人、どうぞ。」という声が扉越しに聞こえてきた。
「失礼します。」
香奈は進路希望の緊張を隠すように扉の前で笑顔を作り、進路相談室の扉を開けた。期間限定で進路相談室になっている部屋には時計が時を刻む音が鳴り響いている。そんな静寂を切り裂いたのは優しく、そして芯のある雰囲気を持つ女性教師だった。机上には生徒の情報やメモになる書類が綺麗に整理されていた。そしてその手元には、バインダーとPCが置かれている。デジタル化が進んでいるため、メモになるものはなく、PCに打ち込むだけのようだった。
「そこの椅子に座ってちょうだい」
教師は椅子に座るように彼女に促す。香奈は元気よく答えた。
「はい!失礼します」
「そうね、今はどう考えてるの?」
「そうですねー、今の考えてる進路は実は〇〇高校なんです。」
香奈の進路希望を聞き、女性教師は少し考えた様子で答えた。
「そうなのね、その高校なら、行けなくもないわね。ただ教師として、真面目な話をすると、この高校は偏差値が普通よりも高くなってるの。それはご存知かな?今のままだと、もし入学ができてもって言う感じで。」
女性教師は苦言を呈した。もちろん、香奈自身もその高校について、調べていたし、以前の友人達との会話中にもよぎっていた不安でもあった。だが、女性教師は香奈の不安げな顔を見て、一呼吸置くと、安心させる様に優しく、笑いかけた。
「でも貴方なら不可能じゃない!前向きに考えましょう、その為に進路相談があるんだからね!じゃあ、まずは成績からね、学力はそこまで悪くないわね、でももしも貴方がその高校に行きたいのなら、もう少しあげるべきかなと思うわ。勿論、今の成績が決して悪いわけではないけど、いざ高校に入学できたとして、そこから勉強に追いつけなくなってしまう子が一定数いたりするの。貴方にそうなってほしくないからね、先生からのアドバイスよ!」
女性教師は香奈の進路希望を親身に考えて、教師として、そして自分の受け持つ生徒達がより良い人生になるようにと、どの様に行動していけばより良い未来につながるのか事細かに、アドバイスをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます