新たな目標

 あの告白から2年後、満開の桜が散るなか陽介は近所の進学校の校門の前に立っていた。

 陽介はその学校を選んだ理由はもちろん日和がいるからである。


 あの告白の後陽介はどうすれば日和が振り向いてくれるのかを三日三晩考えた、そしてたどり着いた結論は至ってシンプルだった。


"俺が日和先輩が好きな可愛い子になることだ"


 他の人が聞いたら頭を心配するようなことだが、陽介は日和が振り向くならどんなことでもやる覚悟でいた。


 そしてこの2年間"可愛い"を学んできていた。


 短髪だった黒髪は肩にかかるまで伸ばし、筋肥大でがっちりとした肉体は最低限の肉を残しつた以前の陽介からかけ離れた姿に変身した。


 それは今日というリベンジのために2年間必死に肉体を作ってきた。


 カツカツと後ろからスニーカーがコンクリートにこすれる音が近づいてくる。そして音が止まるのを確認しゆっくりと振り向いた。


 そこには2年前よりも可愛くなっている日和が陽介を真剣な表情で見つめながら立っていた。


 春風に揺られる彼女の髪は中学の時よりもくせ毛がなく艶を帯びており男の陽介でも一長一短では手にいれられないものだというのはひしひしと伝わってきた。 


 そのほかにも中学のころには存在しなかった大きすぎず小さすぎないリンゴほどの実が存在しておりここにきて陽介はかがんでしまいそうなほど緊張していた。


「日和先輩、俺は2年間可愛くなるために頑張ってきました。俺と付き合ってください!」


 気持ちを必死に抑え2年越しにもう一度全身全力で愛の告白をした。


 数分後陽介は校門近くを肩を落としながら1人で歩いていた。


 告白の結果としてはダメだった。


 日和の申し訳なさそうに苦笑いしている顔が頭から離れられなかった。


 その時突然後ろから勢いよく肩を叩かれ陽介は体制を崩しそうになった。


「元気出せって!次に向けて頑張れよ!」

「陽介は昔から可愛げがなかったからねぇ〜可愛くなるのは難しいんじゃないのw」


 声の主人は幼馴染の大石遼太おおいしかなた岩村穂乃果いわむらほのかだった。2人とは幼稚園の頃からの付き合いで陽介の恋愛についても色々と相談に乗ってくれた家族のような存在だ。


 2人とも陽介と同じ高校に入学し先ほどの告白も遠くの木陰から見守っていた。


「かなた、、、、、ありがとうでも俺どうすればいいのか分からないよ、、、、」

「そんなの簡単じゃねぇかよ!」


 遼太は自信満々に陽介の目をまっすぐと見ていた。


「要するに陽介が1番可愛いと証明できればいいわけだ。そしてこの学校には他の学校にはない1つの行事が存在する。」

「そうか、、、、それならいけるのか、、」

「あぁ、いけるさ!文化祭のミスコンで優勝すればお前が1番可愛いと証明できるんだ!」


 ビシィと聞こえそうなほど勢いよく陽介に指を刺した。


 陽介は先ほどまでの落ち込みが嘘のように目に生気が宿っていた。


「遼太、、、お前は本当に天才だ、、、、」

「だろ?俺は天才なんだ」

「あぁ、ほんとにお前は天才だ!」


 そこまで褒められるとは思っておらず遼太は照れくさそうに鼻をかいていた。


 右手を真上に上げ陽介は声たからかに宣言した。


「俺はミスコンで1位になり今度こそ告白を成功させるぞー!」

「おー!俺も応援するぜ!」


 陽介の新たな目標に盛り上がっているなか一歩手前から様子を見ていた穂乃果は遠い目をしこれから起こるであろうことに頭を悩ませていた。



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