転生したらガラスペンだった~陳腐な転生物語~
@aoi_time
第1話✒転生したらガラスペンだった
気が付くと正面に鏡があった。けれど、どういうわけか俺の姿がうつっていなかった。
俺は死んで幽霊になってしまったのだろうか。鏡にはフローリングの床に落ちた一本のペンのようなものがうつっているだけだった。
体を動かそうとしたが全く動かない。
俺の体は……いったいどうなってしまったんだろうか。
部屋の中はごちゃごちゃとしていて統一感がなく物であふれかえっていた。本棚には収まりきらないほどのたくさんの本。その隣の棚には濁った黒っぽい液がはいった小瓶がぎっしり。
ここはいったいどこだ?
「ふぁーあ」
背後からかわいらしい声のあくびが聞こえた。
「あー、大変!!」
続く大きな声と共に自分の体が宙に浮いたような感覚。
「大切なガラスペンがぁ……」
そして突然の目の前に大きな瞳があらわれた。なんだ?巨人!?
「良かったぁ。割れてない。寝ぼけて落としちゃったのね」
瞳がズームアウトしていくと女の子の顔。大きくてシュッとした目を細めて巨大な少女は微笑んだ。
とてもかわいい笑顔だった。少し丸っとした鼻がかわいさを際立たせている。
少女は机に向かって椅子に座ると俺の体をなにかにこすりつけた。
「この色もダメか。好きだったのにな。はぁ……」
深いため息だ。どうしたのだろうか。
(どうしたんだい?)
俺は恐る恐る声を出そうと試みた。しかし、声にはならなかった。
「キャッ」
少女の声と同時に体が落下する感覚。その直後に全身に痛みが走った。
カランカランと音がなる。
(いてぇ)
「ガラスペンがしゃべった!?」
少女が驚愕の表情を浮かべている。
直後、急に部屋全体が柔らかな光に包まれ、全身白い服に身を包んだ女性が現れた。
「初めましてヒロコ。私は“ベナトゥワ・イク”この国の女王です」
え?なに?だれ?どっから湧いてきたの?急展開すぎてついていけないんですけど。
「イク様……?どうしてこんなところに?」
少女は女王と名乗る女を見て驚きの表情を浮かべている。
「ヒロコ。あなたの知っている通り、この世界は隣の国の王、“マニランマ3世”の独裁により滅びようとしている。そこであなたにこの世界を救ってほしいの。この世界を救えるのはあなただけなのです」
なるほど、そういう設定なのね。
「私……ですか?どうして?無理です。私はただの小学生ですよ」
まぁ、そうなるよな。
「大丈夫。あなたならできるわ。いえ、あなたにしかできないの。私から微力だけど、お助けアイテムを送るわ。そのガラスペンよ。別の世界から魂を拝借してきたのよ」
え、まさか俺のこと?お助けアイテムなのに事情とか説明されてないけど?転生したのに俺主人公じゃないの?てゆうかガラスペンってなに!?
「マニランマ三世が作りだした“マニケラトプス”の吐く強力なインク“ミッドナイトブラック”によってこの世界の光と色が失われつつあることはヒロコも知っているわね?そこでヒロコ、あなたに取り返してほしいの、この世界の光と色を。
この世界にはミッドナイトブラックの影響をも受けない伝説のインクが七色存在するの。それをあなたに集めてほしいのよ。これにインクの場所が書いてあるわ」
女王は地図のようなものをヒロコちゃんに渡した。
「集めたインクを合わせた時、それは虹色の強い輝きを放ち世界を救ってくれるでしょう。それでは検討を祈る」
ほうほう……え?
イク様の体がどんどん薄くなっていく。
(待って、待って、まだ消えないで!俺は?俺はどうやったら元の世界に戻れるの?)
「またガラスペンがしゃべった!?」
ヒロコちゃんが叫ぶ。
(うん。ヒロコちゃん、今はとりあえずいいから、そこはおいといて?)
「忘れていたわ。世界を救うことが出来たら、これを開けなさい」
女王はヒロコちゃんに巻物のようなものを渡した。
「あけたらなにをすれば良いか、おのずとわかるでしょう。あーあと、テレパシーで念じればヒロコとだけ会話ができるようになっているわ。それじゃあ」
最後はスッという効果音でも聞こえてきそうな感じで完全に姿が消えてしまった。
待って待ってー。全然状況がつかめてないんですけどー。てゆうかヒロコちゃんが巨人なんじゃなくて俺が小さくなったのね。
「私の名前はヒロコ。これからよろしくね。ガラスペンさん」
ヒロコちゃんがこっちを見て微笑んでいる。
え?状況受け入れるの早くない?
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