第5話 F92オーラバトラー
カレッツァ帝都城下より北へ35㌔地点の平坦な内陸砂丘地帯へと一台の
薄闇の空に光源が伸びる。前後左右に不規則に薄闇を反射し伸縮するその様子は、何かしらの前照灯である事を示していた。
タタンッタンタンタンと今にも止まりそうな原動機の悲痛な叫びを知ってか知らでか、フラフラと砂丘を越え、一台のホバーサイクルが砂埃を引き連れ近付いてきた。
≪マスター服を着てください≫
「んあ~⁉ 嫌だッ――― 」
≪多分
「ふぅ~んッ、何ソレ? 」
≪きっとこの
「使者って事? マジめんどくさ、あたし今、めっちゃ機嫌悪くてぇ。。。何でか分る? 」
≪伺います――― ≫
「此処に連れてこられた意味も分かんないし、目的も聞いてないッ」
≪確かにそうでしたね…… 多分マスターは…… いえ、バルザ様は此処が追っ手から逃れるのに丁度良かった惑星である事と、情報を求めて降り立ったものと考えます≫
「情報って?
≪それは…… 申し訳御座いません分かり兼ねます≫
「はぁ、面倒だけど仕方ないわね。
ヤル気の無い声に
フロントジップの一部薄い合金加工を施したレザーベアトップに、同じく革製のダブルショルダーガンホルスターをぐだぐだ背負う。
ウエスト部にレースが有る透け感の高い深紅のガーターベルトは、フリルの付いた大きな網目の挑発的なストッキングと連結され、足先からの艶めかしい全容は、黒い厚底のニーハイブーツによって飲み込まれる。
仕上げには
≪マスターあのっパンツは履かないのですか? ≫
「うるせぇ~んだよッ、てめぇ~いちいちよぉ、人のキン○マの心配してんじゃね~ぞッ、電源抜いちまうぞ? こっちは棒の取り扱いにいつも悩んでんだっつうの‼ 」
≪よっ余計な一言でした…… ≫
決め技にシルクハットを深く被り、片眼鏡から延びるチェーンを尖った耳に掛ける。持ち手の先端に
―――なんちゃってヴァンパイアの
「これがご先祖様スタイルなんでしょ? ちゃんと
≪ええと竹…… あのぉマスターが学んだ塔の育成AIのオープンネームとシリアルNo,は覚えておられますか? ≫
「知らんよそんなのッ――― 」
≪ですよね…… ≫
「あたしは
≪マザーです――― ≫
そんなやり取りもつかの間。ホバーサイクルが近くに停車した事を確認すると、マザーは機体下部のセンター寄りに有るオープンハッチを開き、タラップを下げた。
「ゲコッゲゲゲッコゲゲコゲ~コ」
拡声器らしき物を持ち、蛍光色のレインコート着た顔の側面に大きな目玉がハミ出た生物が、チカチカと光を送り船に向って何かを語り掛けている―――
「何アレ。ウケるんですけどッ
≪マスター言語ツールをダウンロードしますか? ≫
「嫌よ! だってまた頭に何かブッ刺す必要が有るんでしょ? そんなの無理だから。しかも何でアタシが
≪確かに現在ではイヤー型の小型言語翻訳機が出回っておりますし、貴重な脳内メモリを消費する事を考えますと…… ≫
「ほらッでしょ? でもあのカエルって耳あんのかな? 」
≪お答え致しかねます…… ≫
「まぁいいや。ちょっと聞いて来る。脳内リンクだけお願いねバザー」
≪マザーですっ≫
両の脇の下のホルダーに愛銃を忍ばせる。ベルーガ・ベレッタ社製、M92SOB-F。通称(F92
タラップを一段踏み出した所で上目遣いの
「ぐみゃぁ~ 」
操舵室に転がったままのバルザの
「完璧じゃんッ、さて名前は何にしようかしら」
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