第24話 釣り

 餌。失礼。山本凪さん。見事に口を割り。

 彼女を餌に、釣りをすることに決定をする。


 いくらレジスタンスの基地だと言っても、完全に孤立無援では暮らしていない。

 資源や物資。食料その他諸々は、どこかしこで入手し、搬入されてくる。


 その中でも機器類は、入手しても。使い方が分からなければ意味が無い。

 そんな、特殊な存在。


 そのため、特殊な経路で搬入をされる。

 こちらの技術者が、中間地点まで赴き、チェックと説明を受け。持ち帰ってくる。

 無論チェックは、GPSや盗聴器、発信器なども要注意だ。


 ユニット内に巧妙に組まれているため、基板ごとチェックする必要がある。


 俺たちは、少し離れた位置で待機中。


 山本凪さんには、カメラと、マイクを付けている。


 今回は特ダネがある。無論ナノマシン製造プラントの偽物。

 人体強化薬の埋め込みタイプ。

 軍用として、以外と重宝される。

 強化臨界まで、数秒で常人の三倍以上で動くことが出来る。

 強化はもっといけるが、自身の力で自分の体が壊れると、適当な報告書も付けてある。中身は、発信器とよくある興奮剤。


 双方向で、欺瞞情報はよくあるので、一度や二度偽を掴まされても向こうも何も言わない。それよりは、継続的に取引が出来る。信用が出来る相手が何よりも重要。

 つまり、個人的に金や権利をほしがる人間。その方が、信用できる。

 その中でも、彼女はポイントがたまっていて、信用できるが、もう少しで始末をする判断を下される状況だっただろう。


「へい。凪。物はこれだ」

「ああ。ありがとう」

「大丈夫か?足下ふらついているぜ」

「大丈夫。ちょっとトレーニングをして、全身に力が入らないだけ」

「ああ。年に数回ある義務か」

「今回はハードでね。まいったわ」


 そう言っているのに、相手のエージェントは、モニターとにらめっこをしている凪の尻をなで上げる。


「ひゃん。やめてよ。必死なんだから」

「わりい。足がぷるぷるだぜ」


 そう言って笑う相手を、凪はにらみつける。

 前回までは、なでられると、自身に興味を持ってくれる相手と言うことで、そんなにいやじゃなかった。

 でも今は、その触り方が気持ち悪い。


 一応真面目にすべてチェックを行い、受け取りをする。

 その受け渡しの、ボードの下で、素早く物を渡す。


 料金の座標も、その時に渡す。

 ちなみに、料金用のモニターは、レジスタンスの車が1km以上離れないと点かない。レジスタンスも金をきちんと渡さなければ、二度と相手が来ないだけ。



 そんな危ない、綱渡りな関係。

「顔はロックをしたか?」

「ああしたぞ」

「しかしあいつがねえ。一体どこで疑いを持った」

「あそこで、通信装置をすり替えようとしたし、落とそうとした」

「あの暗い中で、それも一瞬でねえ。おっそろし」

 そう軽口を叩いているのは、中根。


 暇そうにしていたから、途中で拾ってきた。


 

 双方が移動をし始める。無論、相手を追いかける。

 途中で止まったのは、金のある座標を確認をしているのだろう。


 金を見つけて、積み込み走り始めようとした瞬間。強い磁力波に精神波を乗せそれをあてる。意識を消失させる。


「電子機器が壊れていませんように」

 そう言いながら、3人の個人情報をぶっこ抜き、ついでに写真も撮る。


「よし。逃げるぞ」


 後は、2時間に一回。発信されるシグナルを拾う。


 シグナル回路は、実は説明書のA4用紙が回路になっている。

 上質の紙は3層で、1層がバッテリー。もう一層が回路とアンテナを内蔵している。


 ダミークリスタルは、光回路で、録画し信号を受ければ、その情報を発信する。



「どうだ?」

「ポイントは、多分これだな」


 マップと重ね合わせて、座標を追いかける。


「大阪シティか」

「どっちだと思う?」

「それは、あれか? 組織全部か一部かという事か?」

「そう」

「流すのも拾うのも、一部っぽいけどな」

「そうだなあ」


 マップの座標は、治安部隊本部。


「本当に、潜入をするのか?」

「しないと駄目だろう」

「まあそうか」

 中根と皆。静流も紡もうんざりした顔になる。


 あの3人のデータも、公安警備部。

 見事に敵だ。


「どこであんな奴らと、伝手を作ったんだ」

 あきれたように、中根がぼやく。

「そりゃ誰かが潜入して、伝手を作ったんだろう」

 静流も、眉間にしわを寄せながらぼやく。

「そりゃ凄い」

 これは俺。本当に感動する。


「まあ押収物とか、手を打ちやすいしね」

「そりゃそうだが。お役所も一枚岩ではないという事だな」


「さあ。ぼやいても仕方が無い。計画を練ろう。逆にデータを貰って、せっかく付けたデコード回路に仕事をして貰おう」

「そうだな。あれは結構大変だったしな」


「そういえば前回のは、どうなったんだろうな?」

 中根が足で、凪を蹴る。

「ひゃい。いま、デコード乱数のアルゴリズムを解析中です。サーバの能力次第ですがすぐに対応すると思います。ヘッド部分に対応コードが書かれていますので」

「だそうだ」

「聞こえたよ」

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