第4話 予期せぬ出来事
さっき、材料を探しに行くとき。
淵の浅瀬に、笹を葉っぱごと、沈めておいた。
川へ入るときに、服を脱がないのは怪我防止のため。
意外と尖った石があり、すっぱりと切れる。
銛になる物は、ススキの軸に爪楊枝ぽいのを作って刺し。糸を結んである。
これは子供のころに習ったが、うまくしないと鱗で滑る。
慣れれば、手づかみの方が早いが、大きな穴へ手を入れるのは危険。
ギギとか、トゲのある魚もいるし。獰猛な亀もいるしな。
ハヤを3匹ほど捕まえ、エラから木の枝を通して浅瀬に置いておく。
淵に向かい、岩陰をのぞき込んでいく。
イワナやヤマメが潜んでいるし、たまにウナギもいる。
見ると、イワナがいるので、岩を抱える様に両側から手を突っ込み。つかまえる。
瀬の方でも鮎がいて、縄張りで向きを変える瞬間を狙い。突いてみるが刺さらない。本来、しゃくり針という3本とか4本の針で引っかけるんだよな。
諦めて淵の方へ戻る。
都合イワナを3匹。捕まえてもどる。
瀬の所で、下ごしらえをして、竹を割り串を作る。
竹は、切られていたのがあったから、ちょっと貰った。
減点かな? ナイフじゃ切るのが大変なんだよ。
「ねえ流生。おかしいの。魚がいないのよ」
青い唇をして、体は震え。未希が文句を言ってくる。
「早く火に当たって体を温めないと、風邪を引くぞ」
そう言って串に刺した、ハヤを2匹と、ヤマメを1匹こそっと差し出す。
「うん」
そう言って、自分のテントへ走っていく。
「俺も風邪引くな」
シャツとかを脱いで、絞る。
ズボンや靴も干しておく。
やがて、魚が焼けてくる頃。
少しうとうとしていた。
もう周りは、日が落ち随分暗い。
薪を放り込み。ふと目線をあげると、火の向こう側になぜか未希が座っている。
バスタオルを羽織っただけで。
努めて平静に、
「どうしたんだ? さっきのじゃ足りなかったのか?」
「んーん。まあ少ないけど大丈夫。ねえ。流生って、私のこと好き?」
軽く首を振った後、じっと見つめ聞いてくる。
「うんまあ」
「じゃあ。何があっても信じてね」
そう言うと立ち上がり、こちらへ来る。
「何で、膝の上?」
それも、こっち向き。
つい視線が、下へ下がる。
火は、未希の背中側だけど、見えるし。
「えっち。私の体。興味あるんだ」
「まあな。随分2年前とは変わったな」
「そうよね。ここも元気」
むぎゅっと、つかんでくる。
思わずキスをする。
魚の味がする。
キスをしながら、抱きしめる。
「んっ。あっ」
吐息がこぼれる。
「男子は知らないでしょうけど、私たち。お薬を飲んでいるから大丈夫よ」
そう言って、耳元でささやく。
腰をずらし、抱え込む。
もうすっかり準備ができているのは分かっていたが、少し手でいじる。
吐息が、激しくなってくる。
「いじ、んっわる」
「だめ。何事も準備は必要」
「んんっ」
力が入り。脱力。
「ありゃ」
「もうっ。えっあっ。いまだめ」
そんな言葉、聞けない。
すこし、抵抗を感じながら、貫く。
「んんっ」
「ああ。痛かったな。ごめん」
「だいっ。じょうぶ」
結局未希は、膝の上で、俺に抱かれながら眠ってしまった。
俺は困ったまま、火の番をしつつ、一睡もできず夜を明かす。
「んっ」
そう言って、未希が目を覚ます。
バッチリと目が合い。状況を理解したのか真っ赤になる。
「あーごめん。体痛いよね」
「大丈夫」
「よっ」
そう言って立ち上がる。明るくなった光の中で見る、未希は綺麗だった。
「明るいところで見られると、さすがに、なんだか恥ずかしいわね」
「そうか? 俺はうれしいけど」
そう言うと、プクッと頬を膨らませ
「えっちぃ」
そう言って、自分のテントへ歩いて行く。
ちょっと歩き方が、ギクシャクしているのは、あれか? 初めてだったからか。
服を着て、森の方へ入っていった。
俺も、服を着て、使わなかったシェルターを壊し。片づける。
帰る準備のため。
燃え残っている薪を抜き。火を弱める。
うん? 遅いな。
気になり、森へ入っていく。
すると、未希と誰かが、言い合う声が聞こえる。
相手は、あれはレジスタンスの使う認識阻害シート。
幾多あるカメラの目を阻害する。特殊シート。
「ちっ。離れろ。レジスタンスが、こんな所で何をしている」
声を出した俺に気がつき、未希を突き飛ばして逃げ出す。
「この野郎」
とっさに手を伸ばし、認識阻害シートを引っぺがす。
中から出てきたのは、美人なお姉さん。
一瞬動きを止めてしまった。
いきなり顔を殴られ、認識阻害シートを持ったまま、傾斜10度の坂を転がる。
「ちぃ」
顔を起こすと、相手は逃げ始めていた。
あわてて起き上がり、後を追おうとしたが、逃げた奴より未希が気になる。
「大丈夫か?」
「うん大丈夫。でもどうして?」
「帰りが遅いから、気になったんだよ。それより、あいつレジスタンスだろう。どうしてこんな所に」
俺がそう言って、手に持った認識阻害シートを見たとき、未希の表情が曇ったことに気がつかなかった。
キャンプの片付けをして、家へ帰っているとき。端末からアラートが流れる。
『緊急避難命令。速やかに家へ帰り待機』
あわてて、未希と走って帰る。
ああ。認識阻害シートを取り上げたから、奴が警戒網にひっかかったのだろう。
家に帰る途中、治安部隊がすでに警戒線を張っていた。
「端末と手のひらをここに」
素直に従う。
「出ていた目的は?」
「単位取得の為。サバイバル訓練です」
「2人共かね?」
「そうです」
そう言うと、表情が和らぎ
「手助けは、していないよね」
と、聞いてきた。
「その辺りは、きっちりしました」
そう言うと、うんうんと頷く。
「では。早く帰りなさい。警戒中だ。怪しい者は見ていないよね」
「ええ。みて……」
そこまで言ったとき、未希が口を開く。
「彼が手引きをしたのを、見ました」
その瞬間。捜査官の雰囲気が変わる。
「本当かね。冗談でしたは、通じないよ」
「証拠に彼は、認識阻害シートを持っています」
それを聞き、捜査官は銃に手をかける。
「持っているなら出しなさい。まあ。本当に持っているなら、持っているだけで、有罪だがね」
俺は片手は上げ、左手でポケットから認識阻害シートを取り出す。
捜査官は、確認し。すぐに俺の端末は、没収された。
連れて行かれる俺を、無表情な未希が見送る。
その日。拘留先で一晩。
色々考えたが、俺には理解できず。
そして、俺の中で、何かが壊れた。
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