恋の選択肢(仮)
ハル
第1話 婚約者と生徒の狭間
「あら、そう。学校の先生を」
「はい」
「今度9月から代理ですけど」
「俺、彼女と結婚を考えているんだ」
「良いんじゃない?ねえ、あなた」
彼氏の・愛村圭吾(あいむらけいご)の両親にキチンとした御挨拶。
結婚前提のお付き合いをしてきていた私達だけど……。
「それよりアイツは?姿が見えないんだけど」と、圭吾。
「あー、斗弥(とうや)君なら部屋なんじゃない?」
「何や?アイツ圭吾君が彼女、連れてくる言うて、ふてくされてんのとちゃうか?彼女いてへんから。ホンマすまんなー」
「いいえ」
そして私達はトントン拍子に一先ず婚約という形になり────
「今日から、ここのクラスを担当される愛村 唯南(あいむら ゆいな)先生だ」
「よろしくお願いします」
ガラッ
引き戸が開く。
「おはよーさんでーす」
「コラッ!衣吹(いぶき)は、また遅刻か?」
「別にええんちゃう?学校けーへんよりマシなんちゃうん?」
「………………」
自分の席につく彼。
「すみません…先生」と、教頭が行った。
「いいえ」
《…新しい教師…》
ガタッ
遅刻して来た男子生徒が、すぐに立ち上がった。
「どうした?衣吹」
「…と、教頭(となり)の女は、先生のコレか!?」
男子生徒は、小指を立てた。
「何を言っているんだ!」
「嘘や!ジョークやんジョーク」
腰をおろす男子生徒。
《アカン…ヤバイやろ?圭兄の婚約者やん!》
《ありえへん…イタイ…イタイわ…》
その日の夜──────
「ただいま」
「あら?お帰り~。斗弥君」
「圭兄は?」
「まだ仕事から帰ってないわよ」
「そうなんや。婚約者の人は?」
「唯南ちゃんなら部屋にいるんじゃないかしら?」
「そうか…」
✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕
そんな私は、親友と外食中。
「唯南、どう?新婚生活」
「別に普通だよ。みんな良くしてくれる」
「そうか。ねえ、ねえ、高校教師ってどう?」
「まだ分からないよ。今日、行ったばかりだし」
「そうかー」
「ねえ、弟とは会えた?」
「全然」
「嘘!?同居して一週間でしょう?」
「うん。そうなんだけどさ」
その日の夜──────
「ただいま」
「おかえり」
私達はキスをすると1つになる。
「シャワー浴びてくる」
「…うん」
部屋を出て行く、圭吾。
「あれ?斗弥、まだ起きていたのか?」
「アカンか?」
「あーそうだ!唯南と一回は顔合わせてくれないか?」
「合わせたくなくても、嫌という程、これからずーーっと合わせる事になるんやし、ええんちゃうの?」
「まあ、まだ向こうは気付いてへんみたいやけど。唯南さん、うちのクラスの担任やってん」
「えっ?」
「担任……教師…って…それ…本当…なの…?」
「唯南…」
「………………」
「あー、嘘やない!つまり、そういう事やから余り深く関わらんといてな。あんたも俺も立場悪くなるんやから。教師と生徒の立場やし分かるやろ?」
そう言うと私の横を横切る寸前─────
「あんまり土足で、こっちに踏み入れんといてな。愛村唯南先生」
スッ
横切ると去って行った。
「…唯南…」
「凄い…偶然にも程があるね?……教師と生徒だって…」
そんな私達の生活が始まろうとしていた。
愛村唯南(あいむらゆいな) 21歳。
愛村圭吾(あいむらけいご)23歳。
そして、衣吹斗弥(いぶきとおや)16歳。
3人の波乱万丈な生活が始まろうとしていた。
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