(二)-11

 愛希子は音を立てないようにしてゆっくり表の方へ歩いて行った。桜の木の方へ近づいていくと、黒い影が動いていた。その動きに合わせて音が鳴っていた。

「誰かそこにいるの」

 愛希子は黒い影に声を掛けた。

 黒い影は動きを止めた。

 愛希子も黒い影もしばらくそのままだった。

 五回目の息を吸い込もうとしたとき、黒い影が動いた。長い何かを手に持っていて、それを振り上げながら愛希子の方に向かってきた。

 愛希子は危険を察知して数歩後ずさった。

 黒い影が近づいてきたが、不意に立ち止まった。そして「あきちゃん」と声を上げた。女性の声だった。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る