(二)-7

 そんなことを思い出しながら、郁美の家の敷地の脇の道を歩いて行った。

 その敷地の角には桜が昔と変わらずそびえ立っていた。小学校のときよりも明らかに枝葉が伸び、咲きほこり散りつつある桜の花びらが、風もないのにときおりヒラリヒラリと敷地の地面に、道路のアスファルトに舞い落ちていた。

 このあたりは台地であった。新興住宅地で区画整理された際、道路は建物を建てるところよりも一メートルほど低い位置に敷かれていた。そのため、郁美の家の桜の木も、そのぶん高い位置にあり、ずっと大きく見えた。


(続く)

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