第15話
「ちょっと出てくる」
「どうしたの? ミナミちゃんのこと探しに行くの?」
「まさか違うよ、母さん。あんなのはどうでもいい。さっきミユキの小母さんから電話でミユキが帰ってきてないって連絡があったんだ」
「ミユキちゃんが?」
「ああ。でもタイミング的に嫌な予感もするから、ちょっと心当たりを探してみるよ」
心当たりと言っても大したところは思い浮かばない。
「じゃあ、要らないに越したことはないけどこれを持っていきなさい。お母さんが昔ストーカーされたときに持っていたものなの」
「これ……ん。一応ね。さんきゅ」
思いつく限りの道具をボディバッグに詰めて自転車に乗り込む。母さんに渡されたブツと無駄に丈夫そうな懐中電灯が重い。
駅前をぐるっと回るが、ファミレスにもカラオケ店にもミユキの姿はなかった。
すでに一通りの交友関係には小母さんが連絡はしたそうだが、誰もミユキとは連絡さえ取っていなかった。
俺もミユキのケータイに電話してみるもコールはすれど受話はされない。
立ち寄りそうな公園なども調べたが痕跡すら見つからない。
「あ、そうだ……」
俺自身は一度も使う機会がなかったのですっかり忘れていたが、ミユキと俺のスマホには位置情報共有アプリをインストールしてあったのだ。
本来俺になにかあった際にミユキが直ぐに駆けつけるようにってことで入れたアプリだった。何もないのにしょっちゅうミユキには俺の位置情報を確認されていたが。
あの女が暴れたあとなので「可能性のあるものは全部潰さないと落ち着かないの」というミユキの提案に乗ったもので、彼女も心配だったのだろう。
「えっと……」
アプリを立ち上げる。
「探す……。ミユキ……。でたな……」
スマホの画面に表示された光点は一箇所に留まったまま動かない。その場所は、俺らの通っていた中学校、の裏手。
「何故あそこに?」
その場所には工場跡地があり、建屋が何棟かあるが人気のないところだ。中学の不良共のたまり場になっているって噂もある。
三階の事務所階にはヤリ部屋があるとかなんとか。俺の通っていた頃にはそんな話もあった。虚実は知らんが。
「とにかく、ミユキのスマホはここにあるのは間違いない。本人も問題なくそこに居て一件落着とな……ればいいが」
「ここか……」
自転車を飛ばし表示された工場跡地の前に来た。
もう一度アプリで確かめるもさっきと同じ場所から移動はしていない。たしかに工場内に光点がある。
工場跡地は高い塀に囲まれているので乗り越えるのは不可能。門扉も固く閉じられ易々とは侵入できなさそう。
「たしかどこかフェンスが切れているところがあるって話だったよな……」
アメリカンポリスが持っていそうなデカくてゴツい懐中電灯を取り出して辺りを照らす。
塀沿いに歩いていくとコンクリート壁がフェンスに切り替わったところに大きな穴が空いていた。
「ここだな。待ってろよミユキ」
※※※
後半の物語が動き始めました。
まだ評価いただけていない方はせっかくなので★付けていってください。
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