第14話 夏休みがやって来た
やっと1年初の夏休み、孤児院の子供達のことも心配だし・・・あれ?ここで3ヶ月経つとあちらではどのくらいなの?
「くれない部長、夏休みに向こうに行ったら5月の頃とどのくらいの時間差があるんですか?」
「おお、いいとこに気づいたね。実話ねこちらとあちらでは時間の進み具合が5倍差だったけど、最後に体験した時間とほぼ変わらない時間に向こう側に行けるんだよ、不思議だろ?」
「え!と言うことは50年ぐらい経ってあちらに行ったら私だけお婆ちゃんなんですか?」
「そこもちょっと違っていてね、僕らはS級になった時点で老化が止まるんだよ。君不老のスキルも取っているだろ、だからほとんで年を取らないのさ。」
「と言うことは私はこちらでも不老ですか?」
「そうだよ必要があれば老化の幻影か変身を使いしかないよね。」
「それなら良かったです。え!と言うことは私は死ななんですか?」
「ん?君ひょっとして不死も取ったの?」
「・・・はい・・。」
「問題ないさ、こっちが無理ならあっちで余生を過ごせばいい。」
「そ、そうですね。気持ち切り替えます。」
と答えながら我ながら何も考えずにスキルを取ったことに遅い反省をする私でした。
1週間後
祖父母に部活の合宿に行くと伝えて家を出た。
最近私の成績や健康がすこぶる良くなり友達も出来たことを喜んでくれていた祖父母は、何も聞かずに送り出してくれた。
今回の合宿は20日、向こうでは100日間だ。
気合を入れて部長と一緒に部室の扉を潜った。
「今日の移動は恵くんの転移魔法で僕の屋敷に飛ぼうか。」
と言われ焦りながらも部長の屋敷の私の部屋を頭に思い浮かべて
「転移!」
トリガーの言葉を口にする。
目の前の景色がざらついたかともうとあの部屋に二人立っていた。
「うん、成功だね。これで君も賢者様だ。」
と言うと部長は部屋を出ていきながら時計を見て、
「30分後下に集合だよ、着替えてね。」
と言われて私はアイテムボックスから新装備を取り出して着る。
その他今回の冒険に必要と思われる品物をブレスレットの収納魔道具に収納し直してから、私は軽い足取りで下に降りて行った。
既に着替えていた部長に続いて玄関から外に出ると、馬車が止まっていて部長が馬車の扉を開けて私に
「どうぞお嬢様、今回は貴族としてこの世界を満喫しながら冒険するよ。」
と言うのです、『貴族って何?』と思いながらも馬車に乗り込む私。
30分ほど馬車に揺られると、目的地である教会が見えてきた。
馬車から降りる私達、教会に入り欲深そうな神父にそこそこの寄付をして奥に向かう。
教会の裏手の孤児院を通り過ぎると、その奥にある空き地であった場所に着いた。
「部長!もう建物が建っていますよ。」
驚き私に
「ここは魔法のある世界だからね、地球の感覚と違うものが数多くあるんだよ。さあ中に入ろうか。」
と背中を押されて扉を開き中に入ると、本当に3ヶ月ほどで作り上げたのかと思うほどの出来上がり。
広い食堂に男女に分かれた大浴場、作業別に分かれた広い作業部屋、階で分かれた男女の寝室。
調理場や地下の食糧庫更には裏手に新たな薬草畑が広がっていた。
「凄いです、すぐにでも使えそうですね。」
「そうだろ、帰る前にこちらで揃えられる材料なども発注済みだったからね。」
と言いながら倉庫に地球産の材料を収納し始めた部長。
「お披露目は明日にしよう、次は子供達に会ってからシスターにお願いをしよう。」
「シスターにお願い?」
「そうだよ、子供達は孤児院の物だから買取の手続きをする必要があるのさ。」
「え!子供達は教会の物なのですか?売り買いされる物なのですか?」
「当然だろ、親のいない子供はここでは商品でしかない。売れなければ奴隷だよ。」
「奴隷・・そんな制度もあるんですね。」
私は異世界の現実を改めて実感したのであった。
ーー 強欲神父と子供達 ーー
子供達の数はちょうど30人、みんな小汚い格好で痩せて不健康に見える、数人は「ゴホゴホ」と咳までしているが、今の私なら分かるあれは演技なのだ。
「神父私の領地で人手が必要でね、あれらを纏めて買い取ろうと思っている。いくらで売ってくれるかい?」
強欲神父に部長が買取を伝えると
「いつも寄付をされるあなたの頼みです、これくらいではどうですか?女も半分はいますから。」
「女?おい、病気持ちを数に数えているのかい。私はここで死ぬより王都を離れた場所で死んだ方が貴方のためになるとまとめて買い取る話を持ってきたんだよ。アコギなことをするなら病人はいらんよ。」
と席を立つフリをすると慌てた神父が
「お待ちください、分かりました。コレでどうでしょか?今までの経費は上乗せさせてもらいます。」
と国から出ている費用をいかにも自分のもののように言う神父に
「ドン」
と言う音で金貨の袋をテーブルに置く部長。
「幾らかは多く入っているでしょう。すぐに貰って行きますよ。」
と金を数え出した神父をよそに孤児院に向かいシスターに合図した。
子供達は裏手の施設に静かの移動すると、男女に分かれてお風呂に入り新しい服と靴を履いて食堂に集まった。
その頃部長は、孤児院と施設をつなぐ道を魔法で塞ぎ、神父の目から子供たちを引き離したのだった。
その日の昼には、教会を出たシスター2人を寮母に新しい孤児院兼職業訓練所が動き出した。
「シスターも来たんですね。」
「何でも創造神様の使徒様のお手伝いがしたいとたっての望みだよ。」
え!私のことなの。責任重大だ。
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