怪しい噂

自室に戻り、お父様に言われたことを思い出す。

西の町に魔物が現れたと言う話……未だに信じられないけれど

お父様のあの表情、冗談だとは思えなかった。

「西の町か……」

私は地図を取り出して、町の場所を確認する。

西の町はここから数時間もあれば着く場所で、私も小さい頃遊びに行ったことが

ある。この町は自然豊かで、町の人達もとても優しくていい場所で

だからこそ、そこが襲われるなんて考えたくもない……

「この森……小さい頃入ったらダメって言われてた……」

西の町から少し離れた場所に大きな森があって、そこには悪い者が

沢山いて危ないから入ってはダメ、と大人達から何度も注意されていた。

その時は何の事かさっぱり分からなかったけど、まさかここに 魔物が現れるなんて……

「今回の事もこの森で起きているのかも知れない……調べてみる価値はあるかも……」

もし、この森に原因があるなら、なんとかしないと……

その為にもまずは情報を集めないと……

そう考えていると、コンコンとノック音が聞こえて

誰だろうと扉を開けると、そこに居たのはルークだった

「ルーク……!?どうしてここに……?」

「ルカが困っているだろうから、力になってあげてくれって君の

お父上に言われてね」

「お父様が……?」

お父様がルークにそんな話をしていたなんて……

確かに、私だけじゃどうにもならない事ばかりだし、ルークが 協力してくれるなら心強いけど……。

でも、ルークを巻き込んで良いのかな……? 私一人でどうにかしなきゃいけないと思うのに……ルークは私が悩んでいるのが分かったのか、私の頭を撫でながら優しい声で大丈夫だよ、と言ってくれた。

だから、私はつい甘えてしまって 彼の優しさにすがってしまった。

「お話しを聞いていてもらえますか……?」

彼は私の言葉に、もちろんと言って微笑んでくれて、私は彼に今までの事を全部話すことにした。

最初は驚いたような顔をしていたけれど、すぐに何か考え込んでしまった。

「ルーク大丈夫……?」

「あぁ、すまない、少し気になる事があっただけだよ」

「気になる事ですか?」

「うん、西の町に魔物が出たという話なんだけど……あの聖女が来た日にも

魔物が現れているんだよ」

それを聞いて、私は背筋がゾクッとした。

偶然……ではないよね……? もしかしたら、聖女の力を狙っている人が魔物を使って……? いや、でもそれは考えすぎかもしれない……でも……

「その魔物はどうしたのですか?」

「騎士団の人達がが討伐したと聞いているよ」

「よかった……でも、そんな話私

聞いたことがないですよ……?」

私は疑問に思って首を傾げる。

聖女現れた日に魔物が現れて騎士団が討伐した。

そんな話今まで聞いたことが無かった……

「この話は騎士団の中でも一部の人しか知らないみたいで、だから 僕もたまたま知ったんだ」

ルークは苦笑いしながらそう言っていた。

だから、この事は誰にも言わないようにと念押しされた。

「そうだったのですね、でも……沙羅が現れた日にも魔物が……」

「俺は最初、沙羅が何かしていたと思っていたんだが……それは勘違いだと沙羅と話していてわかったよ」

「当たり前です!沙羅がそんな事をするはずがありません……」

けれど、何か引っかかる……

沙羅が現れた日と魔物が現れた日が一緒で、沙羅が魔物を操ったとか……

いやいや、沙羅がそんな事するわけがない! 私はブンブンと頭を振り、嫌な考えを消す。

……これは一度、沙羅と話をしないといけないのかもしれませんね。

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