学園に通う為に

あの日、ルカに学園に行かないか?と誘われた時正直、驚いた。

だって、私なんかが通える様な場所じゃないと思ってたし、あの人が私が学園に行くことを許可するはずがないと思ったから。

もしかして、何か裏があるのでは?とも一瞬だけれどルカを疑ったりもした。

けれど、私に話しかけるルカの表情はとても優しくて、私の考えはすぐに間違いだと分かった。

「学校かぁ……ほんとに私が通ってもいいのかなぁ……」

そう呟きながら天井を見上げる、ルカはいいって言ってはいたけれど

アルマが許してくれるのかも分からないし

、そもそも私が通うことを快く思わない人も多いはずだ。

そう考えると、不安ばかりが募ってしまう。

「って!ウジウジしてたらダメだよね!」

パチンっと頬をたたいて、気合を入れた所で私は自室を出て

アルマがいる部屋へと向かう事にした、どうか何事もありませんようにと

祈りながら……

*****

扉の前で大きく深呼吸をしてから、部屋の扉をコンコンとノックする。

すると、部屋の中から誰だ?と声が帰ってきたので、沙羅です。と

返事を返すと、中から入れと言われ入るように促された。

「お前が俺の部屋に来るなんて珍しいな?どうしたんだ」

「えっと……アルマ様にお願いがあって……」

「お前が?俺にお願い?」

「っ……」

私の発言に、アルマはふんっ、と鼻で笑いがら私を見下ろした。

こんな反応される事は正直予想はできていた、けれどここで引いたら折角

ルカが私の為にしてくれたことが無駄になってしまう、私はふぅ、と息を吐いて

アルマに向き合った。

「用事はそれだけか?だったらさっさと………」

「待ってください……!」

「なに……?」

「私……学園に通いたいんです……」

「学園に……?今までそんな事言ったこと……そうか、ルカだな!ははっ、あいつ何だかんだ言って俺の事が好きで仕方ないんだな、全く意地を張ってないで素直になればいいのにな」

そんな事を言いながらアルマは楽しそうに笑う。

ルカがアルマを?冗談じゃない、そんな訳ないでしょ

こいつはバカなのか?と、思わず口に出しそうになったのを慌てて押し込んだ。

「ルカ様は関係ありません、私が学園に行きたいと思っただけです」

「ルカにそう言えと言われたんだろう?あいつは本当に可愛いな、学園だったか?お前の好きにすればいい」

「…………いいのですか?」

「俺がいいと言っているんだ。婚約者のお願いを聞くのも夫の務めだからな」

本当にこいつは何を言っているんだと呆れたけれど、学園に通えるみたいだし

今は少し目を瞑っておこう。

そうと決まれば、早くこの事をルカに知らせないと……

アルマに形だけのお礼を伝えて、私は部屋を出た。

急いで自室に戻り机に向かい、手紙を書くことにした。

今度は手紙を出していることがバレないよう、信用できる執事に手紙を

預けるつもり、どうか無事に届きますように……

そう祈りながら私は手紙を書き上げた。

内容は、学園に通う許可が出た事と、アルマがまた変な勘違いをしている

みたいだから気を付けてと、そして最後にルカに感謝している事を書いて

封をした。

「これで大丈夫かな……後はバレないように届けてもらえれば……」

ふぅ、と一安心して私はベッドに横になった。

早くこの手紙がルカに届きますように、と祈って私は目を閉じた。

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