若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

久しぶりの二人の時間

昨日は、色々な事がありすぎて今でも夢だったのでは？と思ったけれど

テーブルの上で、気持ちよさそうに眠るムルを見つけて夢じゃ無かったんだなぁ……と実感した。

まだ寝ぼけている頭を無理やり起こしベッドから出た。

身支度を整えて、朝食に向かう事にした。

*****

朝食も済み、自室でのんびりしながら今日はこれからどうしようか、と考えていたら、コンコンと扉がノックされた。

「はい、どうぞ」

「失礼します、お嬢様お客様がいらっしゃいました」

「分かりました、今すぐ行くとお伝えください」

そう伝えると、私は客間に急いで向かった。

そこには、ルークが座っていて、私が来た事に気付くと笑顔でこちらを向いたので、私も微笑み返した。

「おはよう、ルカ。いきなりお邪魔してゴメンね？」

「いいえ、でもこんな時間に来るなんて珍しいですね？何かあったのですか？」

「うん、最近二人っきりになることが無かったから、久しぶりに

ゆっくり話がしたいなって思って……」

そう言って、少し照れたように笑うルークを見て、不覚にも可愛いと思ってしまった。いつも格好いいと思っていたのに、こんな表情もするのかと……

そして、私も彼と二人でゆっくりと過ごしたいな……とも思っていたので、断る理由もなく了承をしたのだった。

それから、お茶を飲みながら他愛もない話をしていた。

ルークが、私の事をじっと見つめていたので首を傾げる。

「どうかしたのですか？」

「ルカの周りを飛んでるその子は……？」

「えっ……？あっ！えーっと……」

そうだ、ルークは少しだけれど力があるからムルの事が見えても

可笑しくはないのだと思い出し、言い訳を考える。

そんな私を見ていた彼は、クスリと笑った。

「この子は、ムル。ちょっと懐かれてしまって……」

「懐かれた？」

「はい、話すと少し長くなるのですが……」

私は、ムルと出会った時の事から今までの経緯を説明した。

話し終わるまで、黙って聞いていた彼は、納得した様子でムルを撫でていた。

ムルは気持ちが良いのか、目を細めてされるがままになっている。

その姿を見ていたら、私もなんだか癒されてきてしまった。

「そうだ、せっかくだしこのままデートに行かない？」

「いいんですか……！行きたいです！」

「ふふ、良かった。それじゃあ行こうか」

そう言うと、立ち上がり手を繋いでくれた。

久しぶりの手繋ぎに、なんだかドキドキしてしまう。

でも、デートだなんてすごく久しぶり……最近は沙羅と一緒にいることが多かったから、なんだか緊張しちゃうな……

それでも、嬉しさの方が勝っている私は、しっかりと彼の手を握った。

こうして、私たちは久々のデートに出かけたのだった。

「それで、どこに行きたい？」

「えっと……」

いざどこに行くと言われても、行きたいところが浮かんでこなかった。

どうしようと悩んでいると、繋がれたままになっていた手にギュッと力が入った。

見上げると、彼が優しく微笑んでいて、それで決めた。

私が選んだ場所は、町から離れた小高い丘だった。この場所からは、町が一望でき、天気の良い日は遠くの海までも見える場所なのだ。

「きれい……」

「でしょ？ここ俺のお気に入りの場所なんだけど、ルカに見せたくて……」

そう言って、はにかみ笑いをする彼にドキッとした。