【完結済み】野獣は美女を食べたくて ~ 絶望に落として食ってやろうと思っていた盲目の女奴隷の心が壊れていたので、 先ずは幸福にしてやる事にした元魔王軍幹部の狼獣人の話 ~

グランド

プロローグ

 


 俺の故郷にはこんな童話がある。

 借金返済の為に獣人の貴族の元に嫁ぐ人間の女の話だ。


 女は始めこそその獣人を警戒していたが、

 次第にその人柄に惹かれていく。

 よくある展開だ。


 だが獣人の方はその女を決して信用しなかった。

 そして疑心の果てにその女を食ってしまう。

 しかし食った後で、 その女から真実の愛を向けられていた事に気づくのだ。


 結末は、 そんな哀れな獣人が自ら命を絶つ所で終わる。


 そんな物語。



 実にくだらない。

 人間が獣人を愛す?

 食った後でその愛に気づく?

 馬鹿げている。


 決して相容れぬ筈のない種族同士が愛し合うものか。

 種族平等を掲げる頭の沸いた連中の考えた妄想だ。


 あの頃の俺は、 そう思っていた。



「ご主人様」



 だが、 果たしてそうなのだろうか。



「わたくしは何の未練もありません」



 俺は未だに、



「さぁどうぞ一思いに」



 その答えを、



「わたくしをお食べください」



 見つけてはいないのだから......。

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