第9話 キジタローとお母さん

「あのおじいちゃん、ちゃんとお家に帰れたかしら……ねぇ、キジタロー?」

 私はしゃがみこんで、ゆっくりとご飯を食べているキジタローに話しかけた。

「にゃーん」

「不思議なおじいちゃんだったな……まるで、あなたが人間になったみたいだったわ」

 私はそっとキジタローの頭を撫でた。

 なんだかほっとする。あぁ、キジタローとあと何年一緒にいられるだろう?

 高齢猫用のご飯を用意したり、健康診断を受けたり。できる限りのことはしているけれど。

「いつか、お別れする時は来ちゃうのよね……それをきちんと受け止めるのも、飼い主の義務なんでしょうけど……私、あまり自信ないなぁ……」

 思わずため息がこぼれてしまう。

「でも、私だっていつどうなるかなんてわからないし……そうよね、生きてるうちに楽しんで、感謝しよう……ありがとうね、キジタロー」

 私は目を細めてキジタローを見る。

「にゃーん」

 まるで私の気持ちが伝わってるみたい。でも、思いはきちんと言葉にしなくちゃ。

「大好きよ、キジタロー」

 なんだか気恥ずかしくて、私はこっそりとキジタローの耳元に囁やきかけたのだった。

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