第3話 サバオ

 なぜだろう……なぜユキナは、あんなにニヤニヤしてるんだ?

 オレの名はサバオ。

 林家で飼われてる、サバトラの猫だ。

 オレは元捨て猫で、拾ってくれたサツキちゃんに惚れている。

 毎日ご飯をくれるお母さんはまあまあ好きだが、あとはそうでもない。

 サツキちゃんの妹ユキナは、オレのそんな態度を面白く思っていない。それはずっと前から知っている。

 だからなおさら、このニヤつき顔が気になるのだ。

 その手には、小さな瓶が2本握られている。

 まさかオレ達用の飲み水が入った皿に、毒でも入れたのか? いや、それではユキナが気に入ってるチャーコまでもが犠牲になる。

 ユキナとて、オレ達の中で唯一構ってくれるチャーコを亡き者にしようとは思わないだろう。

 オレは、なんの不信感も抱かずに水を舐めているチャーコとキジタローさんを横目で見ながら、そっと皿の水に近づいた。

 今のところ、二匹ふたりに変化はない。

 ……オレの気にし過ぎか……

 喉の乾きに耐えられず、オレはユキナのニヤつき顔を警戒しつつも皿の水を舐め始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る