第10話 お花見って桜を見るのは最初だけだよね
〜♪〜♪
「ん?すまん、電話だ」
ケーキを食べ終わった後、普通にゲームをして遊んでいたら俺のスマホから着信音が。画面を見ると掛けてきたのは夏川。一体何の用だ?と思いつつ一言断りを入れてから電話に出る。
「もしもし?」
「ブラザー!お花見しようぜ!」
電話に出ると開口一番そんなことを宣うバカ。脈絡がないな…。
「唐突だな。いつものことだが。いつ?」
「明日!」
「急過ぎるだろ。別にいいけど」
夏川が唐突に何かしようと言い出すのはいつものことだ。特に予定もないので了承する。
「面子はいつもと同じか?」
「ああ、その予定だ。彩音ちゃんを誘ってくれても構わんぞ?」
「そうか?彩音、明日お花見するけどお前も行くか?メンバーはこの前と同じ奴ら」
「お花見?私も行きたい!」
「私も行きたいのです!」
彩音にお花見に行くか尋ねたら話を聞いていた小唄ちゃんも行きたいと言い出した。
「別にいいけど小唄ちゃんが知らない奴らもいるぞ?」
「彩音ちゃんとおにーさんがいるのなら問題ないのです」
「ならいいか。夏川、彩音の他にもう一人追加で。……夏川?」
彩音の他にもう一人行くことを夏川に伝えようとしたら夏川から返事がない。どうした?
「……彩音ちゃんが近くにいるのはまあいい。だがハル!別の少女も近くにいるのはどういうことだ⁉︎女子小学生を二人も部屋に連れ込んでいったい何をしてるんだ⁉︎」
「人聞きの悪いことを言うな。普通に遊んでるだけだよ」
「部屋に連れ込んでることを認めたなこのロリコン!おまわりさーん!この人です!」
「おいバカやめろ!変なこと言うんじゃねぇ!」
夏川がとんでもないことを言い出したが部屋に連れ込んでることは事実。だが手を出した訳ではない。それでも僕はやってない!
「男子って大きくなっても子供っぽいところあるんですね」
「そうだよー。遊んでる時なんかは子供っぽいかな。だけど真面目な時は大人っぽくて頼りになるんだー」
「ギャップ萌え?とか言うものなのです?」
ギャーギャー騒ぐ俺の後ろで彩音と小唄ちゃんが何か言ってたが、夏川に弁明していた俺はそれどころではなかった。このままではロリコン認定されてしまう。
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そんなこんなで翌日、俺は桜の木の下にブルーシートを敷いて場所取りをしていた。
「少し前まで雪が降っていた気がするがもう桜が咲くんだな」
「ここのところは暖かったからですね。近年の日本は春と秋の期間がとても短くなった気がします」
「そうだよな。三月の頭に雪が降るくらい寒かったのに中旬には桜が咲くくらい暖かくなったし。寒暖差がひどいわ」
この場には俺の他に氷上もいる。元々は俺一人で場所取りをする予定だったが付き合ってくれている。暇なのか?
ちなみに言い出しっぺの夏川は買い出しに行っている。場所取りと買い出しのどっちがいいか聞かれて座っているだけでいいこちらを選んだ。
「しかし楽ではあるんだが暇だな。まだ集合時間までは時間あるし」
「暇なら対戦でもします?」
俺が暇を持て余してそう呟けば氷上がバッグから携帯ゲーム機を取り出して聞いてくる。
「いや、暇とはいえせっかく外にいるのにゲームするのもな。向こうにいる子供達みたいに見習って外で遊ぶのも…」
そう言って少し離れた所にいる子供達に視線を向ける。
「あっ、やべっ!充電切れた!」
「何やってんだよー。しっかり充電してこいよなー」
「しょうがないなー。あそこの○ックなら充電できるだろ。行こうぜ」
携帯ゲーム機でゲームしていたらしい子供達はそう言って立ち去って行った。
「………」
「………」
「現代っ子ですね」
「わざわざ外に出てきてまでゲームするのかよ…」
桜の木の下に座っていたにも関わらず桜には目も向けないとは…。まあ現代人はどこにいてもスマホをいじるから似たようなものか。
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「待たせたなブラザー!そして氷上!食い物と飲み物買ってきたぞ……って、何してんだ?」
しばらくして食い物と飲み物を両手を一杯にして持ってきた夏川が俺達を見て戸惑っている。
「見りゃ分かるだろ」
そう言いつつ右を向く。
「というかどれだけ買ってきたんですか?その量だと絶対余りますよ?」
氷上がそう言いつつ下を向く。
「余ったら各自で持ち帰ればいいだろ。ってまだ続けんの?」
夏川が呆れたような声を出しつつ荷物を置くと残りのメンバーもやって来た。
「お待たせー。二人とも連れてきたよ」
「こんにちはー!」
「はじめましてなのです!」
「ああ、悪いな吉崎。彩音と小唄ちゃんを連れて来てもらって」
俺は場所取りする為に集合時間より早くに来たので吉崎に小学生二人の引率を頼んでおいた。吉崎に礼を言いつつ上を向く。
「それはいいんだけどいつまであっち向いてホイやってるの?遠目からでも分かったけど、桜の木の下で男女があっち向いてホイやってるってかなりシュールなんだけど」
「暇だったんだよ」
暇つぶしに始めたが意外と白熱して面白かった。だけど確かに桜の木の下で男女二人っきりであっち向いてホイをしているのはかなりシュールな画かもしれない。そう言えばよく視線を感じた。
「何やってんだあいつら?ってみんな思ってたんじゃない?」
呆れたような声を出しつつ吉崎が料理を並べる。作ってきてくれたのか?
「簡単なものだけどね。買ってきたものだけじゃ味気ないでしょ?」
「ほう、流石吉崎!女子力高いじゃないか!早速食おうぜ!」
花より団子な夏川はもう目の前の料理に意識が向いている。
「乾杯してからね。それに小唄ちゃんとは初めてなんだし自己紹介くらいしようよ。あとハルと瀬奈ちゃんはそろそろあっち向いてホイをやめて」
「へいへい。氷上、決着はまた今度な」
「勝負はお預けですね、先輩」
吉崎に止められたのであっち向いてホイをやめてコップにジュースを注ぐ。割と長いことやってたので首が痛い。
「という訳で新しい美少女との出会いを神に感謝して乾杯!」
「何に対して乾杯してんだお前は」
軽く自己紹介を済ませたところで主催の夏川が乾杯をする時に言ったのがこれである。感謝された神も困惑するだろう。
「よく私やましろ先輩と一緒に遊ぶのにまだ満足できないんですかロリコン先輩?」
「あはは…」
氷上や吉崎も呆れ返っている。
「美少女は多いほうがいいだろ?それにお前らは確かに美少女だが中身が残念だし」
「本当に失礼ですねペド先輩」
「まあまあ、落ち着いて瀬奈ちゃん。ハルや夏川君の方が残念だから」
夏川に中身が残念と言われてイラっときている氷上を吉崎が宥めている。それはいいんだがもっとマシな宥め方はなかったのか?さらっと俺までディスられている。
「おにーさん達は本当に友達なんです?さっきから悪口が飛び交ってますが、好きな子に意地悪したくなるアレです?」
俺達のやりとりを聞いていた小唄ちゃんが首を傾げている。
「ふっ…確かにこいつらは中身が残念とはいえ顔はいいし、性格も嫌いではないが恋愛的な意味で好きになることはないな」
「このくらいの軽口は戯れ合いみたいなものだ。本当の友達ならこの程度で関係が悪化したりはしないものさ」
「そうなのです?なら友達に試してみるのです」
「ハルも小学生に何を吹き込んでるの。試さなくていいからね小唄ちゃん。いきなりそんなこと言うと友達がびっくりしちゃうからね」
小唄ちゃんに友達というものをレクチャーしようとしたら吉崎に止められた。解せぬ。
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「ところで小唄ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「なんなのです?」
しばらく桜を見つつ料理を堪能したところでふと目に入った物がある。そういえば聞くのを忘れていた。
「なんでスコップなんかを持ってきたの?」
最初から気になっていたが聞くタイミングがなかった。一緒にやってきた吉崎や彩音は知っているのか?
「それはもちろん桜の木の下を掘る為に持って来たのです!」
「何故?」
「桜の木の下に本当に死体が埋まっているか確認する為なのです!」
笑顔でなんてこと言うんだこのロリは。
「小唄ちゃん、それは迷信だからね?本当に埋まってたりはしないからね?」
「元ネタは諸説あるよな。小説からってのが有力だったか?」
「そうなのですか⁉︎」
優しく諭すような吉崎と料理を貪っていた夏川の言葉に小唄ちゃんが驚いている。本当に死体が埋まっていると思ってたことにこっちが驚くわ。
「む〜、ロマンがないのです」
「そんなロマンは捨ててしまえ」
しばらく飲み食いしてある程度満足してきたのかみんな食べるペースを落としてゆったりとくつろぎ始めた。夏川と小唄ちゃんはまだ食ってるが。
「夏川はともかく小唄ちゃんもよく食うな」
「ましろおねーさんの作った料理がおいしくて止まらないのです!」
「あはは、ありがとう。でも食べ過ぎは体によくないよ?」
料理を褒められて吉崎が嬉しそうだ。
「それにいっぱい食べて早く大きくなりたいのです!目指せボインボインなのです!」
「ええ…」
「そんなに食べてると胸の前にお腹が大きくなるんじゃないかなー?」
彩音が辛辣なこと言った。ぶっちゃけ同意だけど。
「バカなっ!なのです!ならどうすればいいのです⁉︎」
「牛乳を飲めばいいんじゃないかな?よく牛乳を飲めば大きくなるって言うよね」
「そうなのですか?瀬奈おねーさんは牛乳が嫌いなのです?」
「喧嘩売ってるなら買いますよ。相手が小学生でも手加減しませんからね?」
小唄ちゃんに襲いかかろうとしていた氷上を取り押さえる。どうどう、落ち着け。
「離して下さい。そこのロリに正義の鉄槌を喰らわせてやるんです」
「やめとけ。あと牛乳を飲めば大きくなるというのは俗説だ」
「そうなのです⁉」
「安心しろ氷上!貧乳はステー…へぶっ!」
余計なことを言った夏川が氷上にシバかれた。そっちは止めない。
「あはは……せっかくのお花見なのにもう誰も桜を見てないね」
ギャーギャー騒いでる奴らを見ながら吉崎が苦笑する。まあ楽しければいいじゃないか。
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