中条星菜は忘れない

仲仁へび(旧:離久)

中条星菜は忘れない



 中条星菜には、忘れられない光景があった。


 幼い頃に訪れたホール。


 そこで催された歌唱コンクールでの出来事が。


 その時そこで、とても綺麗な声の女の子がいたから、星菜はその子供と友達になりたいと思っていた。


 ほかの出場者は、その女の子より大きな人達ばかり。だから女の子は、とても心細そうにしていた。


 だから、手を握って励ましてあげたいと思ったのだった。


 見ず知らずの人間がするのはおかしいけれど、友達ならおかしくないはず。


 そう思って。





 時が経って、大きくなった星菜は、その女の子と再会する。


 ずっと友達になりたかった事を打ち明けた星菜は、その女の子、歌ヶ崎小鳥と友達になる事ができた。


 二人はどんどん仲良くなって親友と呼べるほどの関係となったが、ある日事故が起きる。


 小鳥はその事故で命を落としてしまった。


 葬式では、素晴らしい才能をなくしてしまったと、多くの者たちが悲しんだ。


 星菜も、小鳥の死を悲しんだ。


 けれど、周りの者たちは小鳥の才能と、そこから得られた利益だけを惜しんでいた。


 星菜は、その事に対して怒った。


 声だけじゃなくて、小鳥にはたくさんのいい所があったのにと。


 小鳥は、星菜が困っていれば、過ぐに助けてくれるやさしい人だし、細かい気配りもよくできる人だった。


 だから星菜は忘れない。


 綺麗な歌声だけが、小鳥の全てではないという事を。



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