ハニートーストなんて食べたことないのに

明鏡止水

第1話

 わたしには、ときどきみるあまい夢がある。

それは、イトコのお兄ちゃんから背中から前へ、ゆっくり抱きしめられ、日当たりの悪い家なのに、そのときだけは。

 夢の中だけは明るいまどろみのなか、あまくとろけるバターのように、後ろからだきしめてもらえること。

 ああ、しあわせ。

 夢の中で心底思っている。

 何気ない会話をお兄ちゃんとする。

 あたたかい。あまい。とろける。

 まさにバター。

 トーストされている気分だ。

 でも、イトコのお兄ちゃんは絶対に、わたしにそんなこと、現実でしてくれない。わかる。

 だから。

 この夢がわたしの核。恋心の核。

 この夢を養分に種が育つことはあってはならない。だってはずかしい。イトコのお兄ちゃんが好きだなんて。

 15歳になっても思いは変わらない。

 わたしは生まれた時から、ちかくにいてくれたイトコのお兄ちゃんが好き。

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