第2話

 病院の最寄り駅から新幹線に乗り、1時間半ほどで、とある内陸県の地方都市に到着する。新幹線を降りると、少し肌寒い。

 駅前のロータリーでしばらく待っていると、シャトルバスが来た。乗る前にナンバープレートを確認する。

 1087

 嫌な予感がして暗算を始める。3で割れない、5で割れない、7で割れない……

「間もなく発車します」とアナウンスがあったところで、ようやく、(√1087以下の最大の素数である)31までチェックが終わった。

 1087は、素数だ。背筋が冷たくなる。

「ドアが閉まります」

 俺は慌ててバスの乗降口に足をかける。


 その瞬間、息が苦しくなる。思わず首元を押さえる。平衡感覚が狂い、視界が暗くなる。頭痛がする。


 反射的に足を外して一歩下がった。ドアが閉まり、バスが行ってしまう。

 3分ほどバス停のポールにもたれかかって休むと、ようやく症状が回復した。

 どうしよう。しばらくしたらまたバスは来るだろうが、今のと同じ車両だろう。

 俺はやむを得ず、タクシー乗り場まで移動した。出費は痛いが仕方ない。

 やがてタクシーが来た。停車してドアを開けてくれる。ナンバーは…

 4153

 3で割れない、5で割れない、7で割れない……

 19までチェックしたところで、タクシーはドアを閉めて行ってしまった。

 どうしよう。次のタクシーを待っていたら、間に合わないかもしれない。

 地図アプリで目的地までの距離を調べる。徒歩で……40分。少し危ういが、走ればなんとかなるだろう。

 俺は走り出した。


 途中から山道になりめちゃくちゃ大変だったが、30分後、俺は目的地に到着した。

 息が苦しい。肺が痛い。そして何より、脚が痛い。校門にもたれかかる。

 息を整えてから校門に入り、昇降口で上履きに履き替える。校内地図を頼りに校長室まで歩く。

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