第15夜 引きこもり仙人

「施しで生きてる割に、デカい態度じゃねえか?」



 飛ばされる巨漢の野次にも、私は動じない。



 苦節40年。



 元ひきこもりだった私は、親が亡くなり、路上生活をしながら、幸福祈願をしてわずかなお金を貰っている。



 だが、たまにこういう輩が必ず来た。



「あなたにも祝福がありますように」

「ん?なんだってぇ?」



 不意の言葉に相手がひるんだ隙に、素早くのどの急所を突いた。



「ふ……ふぐ!お、おわぁあああーー!?」



 急に巨漢の顔が、むくみ出したかと思うと、一瞬で身体が縮んだ。



「安心しなさい。あなたの病苦は絶たれました」



 秘孔を突かれた相手は、身体から毒気が抜かれて、針で刺した風船のように肥満体が解消したのだ。



 まさに、神がくれた恵みとばかりに、周りから拍手喝采が起こった。



 踵を返した私は、ほっと胸をなでおろす。



 ……通信講座を受けておいて、本当に良かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る