第27話 水魅の落煙[みなみのらくえん](後編)
「さあ、早く! みんなここを出て!」
リディアが皆を導き、ローエングリンはギネビア皇を連れ、ジナイダとスキールニル、ジェロムはフレイアを守りながら寺院を走り出た。
同時に、轟音をたてて寺院が崩れる。
「あれ!? トールさんは……あれか!?」
浜の方だった。巨大な海龍とトールが戦っていた。
トールの手に握られていたハンマー……それは紛れも無く『ミョルニル』だった。
ミョルニルはトールが敵に投げつけても、元通りトールの手にもどって来る、不思議な武器だった。
「トールさん! どこでそれを……」
「ムスペルの村でもう一つもらった!」
リヴァイアサン対トール……ほぼ互角の戦いだ。フェイたちの命を奪った仇に、トールは立ち向かう。
その後ろでは、寺院を破壊したスルトがリディア、ジェロムとの戦いを始めている。
ローエングリンはしっかりとギネビア皇を守り、フレイアとスキールニルはこの際どうしようもないので戦いを見守る。
そしてジナイダがジェロムたちに加勢しようとした時、霧のようにスッと現れたのは、水のアエギルだった。
スルトの相手をするジェロムとリディア。けっこう息が合ってたりしてジェロムにっこり。
「なんだァ? おい、スルトさんよ。口ばっかりでいやに弱えじゃねーかよ!」
「その様子じゃカレンさんとの戦いから逃げ帰ったように見えるけど?」
「おまえら……人が気にしている事を……!! もう少し強い身体があれば……!!!」
「そんなん、負け惜しみにもならんて」
「切り札ゆうんは魔法のことや。ムスペル辺りで修業して三つも覚えてんで! エネルギーボルトに、テレポートに……
「僕……ホントに死んじゃいましたよ、ジェロムさん。でも、もう恐くなんかない……」
「よくぞここまで立派になられました、フレイ王子! ささ、これを!!」
スキールニルがフレイに『シグルスヴェルズ』の剣を渡した。
「僕はスルトと戦います。ジェロムさん、リディアさんはアエギルの相手をして下さい!」
「よし、分かった。お前でも倒せるよ。こいつ、弱いから」
「弱いだと~! オレを怒らせおって……フガ~ッ!!」
「さ、行こうぜリディア。ジナイダが危ねえ!」
ジェロムたちはその場を去り、フレイがスルトを少しずつ押し始めている。
フレイの手に渡ったシグルスヴェルズ……これも不思議な剣だった。その刀身は常に薄い青色に光る水煙をおびており、斬られるたびにスルトが苦しむ様子が分かった。
火をエネルギーとしているスルトに『シグルスヴェルズ』の水のパワーは効果があった。
やがて追いつめられたスルトの懐中から、一つの聖杯が落ちた。『グラール』だった。
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