第3話 白金の騎士
フレイ王子たちを追ってジェロムはミドガルドとアスガルドの国境まで来た。
関所には恐い顔をした兵士が立っており、こちらを見ている。
(ヤバいな……ここまで来て思い出したが……王様から通行証をもらってねえっ!)
しかし、関所の兵士はすんなりと通してくれた。
「ミドガルド王家の方ですね。どうぞ、お通り下さい」
よく考えてみるとジェロムのつけた陣鉢には王家の紋章が描かれていたのだった。
関所を抜け、ワルハラの都を目指すが、フレイ王子たちの姿は一向に見当たらない。
ノーアトゥーンで買って来た食料もそろそろ底をつこうとしていたところでジェロムは都についた。
フレイア姫がいたらしいグラッズハイムの城に入り、王子を探す。
なんでも、人々の話だとここの王家では最近色々と問題が起こっているらしく、王はまだ11歳のバルドル、摂政にはバルドルの祖父ボルの親友イミルがついていた。
バルドルの父オーディンは王家から姿を消しており、妻のフリッグは召使いまで成り下がっているという。
城内で話を聞き回っているうちに、フレイ王子が見付かった。
「王子! フレイ王子!!」
「誰だ、お前は……? ん? それは王家の紋章ではないか!!」
「
「……よく見ればあの時の旅の者ではないか。あの時はすまなかった。しかし今はそれどころではないのだ!」
「すでに存じております。フレイア姫が脱走したのでございましょう? 王からは王子を連れ回して鍛え上げてくれとも言われましてね……ついて来てもらいます!」
「ちょっと待ってくれ……おい、スキールニル! 何とかしてくれ!」
フレイの声を聞いて侍女のスキールニルが駆けつけて来た。
「何をされるのですか! おやめ下さい!」
「待て、これには訳があ……」
理由を話すとスキールニルは意外とすんなり受け入れてくれた。
「……そうだったのですか。では私も連れて行って下さいませ!」
「でもスキールニル……お前は……」
「何を言うのですか、王子。私、女とてまだ25。それにナイフの使い手ということも忘れてもらっては困りますわ」
スキールニルは
かくしてジェロム、フレイ、スキールニルは修業へと旅立つのだった……(?)。
グラッズハイム城を後にし、ワルハラの都に出たジェロムたちは驚愕した。彼方からモンスターの群が向かって来るのだ。
「行くぞ、王子! 都を守るのだぁっ!!」
「い……いやだ……恐いよ! ボクは行かないぞ!」
「黙らんか、フレイ! 行くって言ったら行くんだよ!」
「何て口のきき方をするのですか! 王子、ここは我々におまかせ下さい!」
「だめだ! 甘やかしてばかりじゃちっとも成長しない!! さあ、来い! 小僧!!」
ジェロムはフレイの手をつかんで無理矢理モンスターの方へ連れて行った。スキールニルもそれを追う。
そのジェロムたちに最初に襲いかかって来たのはコボルドだった。
だが、次にかかってきたクローラーはそうはいかなかった。敵の触手は次々とジェロムを襲い、その毒によって体の自由はうばわれた。
フレイはパニックになってその場から逃げ出した。
麻痺したジェロムをクローラーの触手は容赦なく襲う。スキールニルの投げたダガーはそれを次々と斬り落とすが、他のモンスターも都へ続々攻め入って来る。
フレイはスキールニルの後ろで震えている。都の人々は逃げまどう……
(ちくしょう……何だって急にこんなに化け物どもが攻めて来やがんだよ……!)
一方、グラッズハイム城の屋上では摂政イミルが都の様子を見下ろし、不敵に笑っていた。
しかし、
モンスターの大群の中から八本足の馬に乗り、プラチナ製のスーツアーマーに身を包んだ騎士がジェロムたちの方へ近づいて来る。
それはあたかも敵の首領に見えたが、その騎士はランスを構えると即座に向きを変え、クローラーたちを串刺しにした。
敵は一瞬にして全滅し、次に攻撃して来たワイバーンさえもその素早い攻撃のもとに打ち落とされた。
それを見たジェロムもフレイもスキールニルも、イミルも誰もが驚嘆せざるをえなかった。
そして誰かがこう叫んだ。
「オーディン様!!」
戦場に吹き抜ける風に翻った青いマントを見て老いた兵士は3年前、王家を去った君主の姿を思い出したのだった。
しかし、騎士はそれに応える素振りは少しも見せず、魔物たちを全滅させると、ジェロムに
* * *
フレイ
Freyr
15歳/男/ミドガルド王子
163cm/右利き
特技:編み物
趣味:お絵描き
好きな食べ物:チョコレート
ベリンダ・スキールニル
Belinda Skirnir
25歳/女/メイド
162cm/左利き
特技:ナイフ投げ
趣味:白魔術
好きな食べ物:ヨーグルト
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