第一章 旅立ち
第1話 刀、刀、刀……
……魔物はいないようだ……。若者は扉を押し開けて部屋の奥へ進んだ。
岩壁のへこんだ所に
「これが名刀
思わず口に出す。刀をもとどおり鞘にしまうと若者は後ろを振り向いてかけ出した。
「もどって来たか、ジェロム」
町へ帰ってすぐ、友に呼び止められる。
「お前の言ったとおりだ。ちゃんと取って来たぜ。……あ、それと魔物なんて一匹もいなかったぞ」
「そうか。でも、あの
「自称は余計だぜ、ハックル。ま、いずれこの国が魔物に襲われるようなことではあれば俺が救ってやるから安心しろ」
「あないな祠に行って来たぐらいで勇者気どり……お笑いやなぁ……」
「……カレン!?」
誰かが横から口をはさんできた。黒い服の下に鎖かたびらを着込み、背中に刀を一振り差していた女だった。
「うちの方はウトガルドの北の方まで行って
「4年も会わなかったがそのおしゃべりはガキのころから変わっちゃいねえようだな……」
「この4年間、うちは修業に修業を重ねてここまで強うなった」
「どこまで強くなったか見せてもらおうじゃねえか!!」
「ほいじゃ勝負や、ジェロム! うちが勝ったらその刀はもらうで!」
「よし、この場で決着つけてやる!!」
ジェロムは刀をハックルに渡した。カレンも刀を外し、ハックルの方へ投げる。
「よう見とれや、ハックル!」
ジェロムが投げ技を決めようとカレンにつかみかかる。が、次の瞬間鈍い音がしてジェロムはそのまま前に倒れた。
真上に跳んだカレンの後ろ足がジェロムの後頭部に決まっていた。ジェロムは動かなかった。
「な……何も殺すことはないだろ!」
「気ぃ失っただけやろ。……こんで落葉はもろたで。小篠・落葉の名刀セットがそろったわけやな」
「……しっかりしろよな、ジェロム。で、カレンさんはどうするわけ?」
「せっかく帰って来たけど……目ェ覚ましたらジェロムに言うといてや。ムスペル……やのうてアスガルドに行くて」
「わかったよ。伝えとく」
名刀二振りを持ってカレンは町をあとにした。
(……勇者になる夢……あきらめんといてな……)
「起きたか? ジェロム、カレンさんはアスガルドに……西に行くって」
「……情けねえよな……あいつの言うとおり俺は大した強くもねえくせに……勇者気どりでヘラヘラしやがってよ……」
「そう落ち込むなよ……女の子に負けたからって……」
「なに言ってんだ、べつに落ち込んでねーよ。それに俺は
「ホント、女好きだな、キミも」
「よし、これを機会に俺は勇者を目指す修業の旅に出るぜ! この国はどうだか知らねーが他の国じゃけっこう魔物が暴れ回ってるらしいからな。それに旅の途中で……」
「はいはい。でも素手は危ないだろ。ちょっと待ってろ。いい物もって来てやるよ」
ハックルは家へもどり、刀を一振りもってジェロムのところへもどって来た。
「これ、もって行けよ。脇差しで短いけどな……」
「どれ……
「いいんだ。ただ持ってたって意味ないさ。友達のために使えるんだからさ」
「ありがとうよ、ハックル。……カレンは西に行くんだったな、じゃあ俺はまずあいつを追いかけるからよ」
「行っちまうのかよ、こんな急に……」
「……
「お……おい、2年って……キミの両親に何て言えばいいんだよ!」
「家出って言っておいてくれや。どうせ今まで20回ぐらいしてるだろ?」
「まあ……そりゃ、知ってるけど……分かったよ、言っておくよ。あこがれのカレンちゃん追いかけて家出ってね」
「だまれぃっ、人間伝言板が!!」
「ふん……あばよ、ジェロム!」
ジェロムは名刀虎徹を持って町を出た。昼もすぎ、日も暮れ始めたころ、ジェロムはノーアトゥーンの城下町に着いた。
(ハァハァ……こんなにかかるとは思ってもいなかったな……ハラへったぜ……え~と、
宿を見付け、ジェロムは一晩すごした。明日は城へ行って王様からアスガルドへの通行証を受け取らなければならない。ジェロムは宿での食事を終えると早めにベッドに入った。
* * *
ジェロム・フォン・フィッツジェラルド
Jerome von Fitzgerald
19歳/男/勇者 (自称)
177cm/左利き
特技:指先を手の甲につける
趣味:名刀集め
好きな食べ物:しけったせんべい
カレン・リンドバーグ
Karen Lindbergh
19歳/女/忍者 (自称)
167cm/左利き
特技:ケンカ
趣味:名刀集め
好きな食べ物:のびたラーメン
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