ぶち殺し

晴羽照尊

ぶち殺し NO.40


「アッハアアアアァァ――ンンッ! レッディイイィィス、アアアァァンド、んジェントルメンッ!! ようこそお! ぶちっ殺しのおおぉぉ――、祭典へっ!! 記念すべき今回ぃっ! 第40回のルール説明はぁっ! ぅわたくしっっ!! ミ・ラ・ン・ダがああぁぁ! ぅ勤めますっ! んパフパフウウゥゥッッ!!」


「っしゃあ! キマッタアアァァ!! ……うんん? どうしたどうしたぁ!? 辛気臭え顔付きだなぁおいっ! 第いいぃぃ、40回っ! 記念すべき記念回ぃっ! ぶち殺しの祭典んんんん――だってのにさぁっ!!」


「……ああああぁぁ、そか。君らまだ、なぁんも状況知らねえもんなぁ……。いよしっ! じゃあ、このミランダちゃんが、懇切丁寧! 手取り足取り腰取りぃっ! 教えてあげるわよおおぉぉんん!!」


「説明しよう! ぶち殺しの祭典とは! 人を殺せるぅ、んスーパーイベントッ! さあぁあぁ、お立ち合いっ! 参加者のみなさんはぁ、ガキになったつもりでぇ! 右手でピストルを作ってみようっ!」


「はぁいい! その指先――おぉっと失礼! 銃口からは、レーザービームのように照準が伸びてるわねぃっ! 祭りが始まったらぁ! 実際その指先はぁ! 人を殺せる銃口となるわよっ! そして、ある一言を合図に、祭りの間中一回限り、照準が捉えたもっとも近い人間をターゲットにぃ! 一撃確殺のスーパービームぅをぉ! んんっ! ぅ打ち出すわっ!」


「んちなみにぃ! その照準は自分自身にしかぁ! 見えないから安心してねっ! さらにちなみにぃ! 照準の色もっ! 各人それぞれ違ってるわっ! これはメディアミックスへの配慮だと思って頂戴っ!」


「ビイイィィムはああぁぁ! 一般的な拳銃の弾丸と同じようなシロモノだけどぉ! 使用者を含めぇ、誰にも見えないわっ! んまあ! 弾速と弾数以外はぁ! なんか超越的存在のスーパーパワーが働いてぇ! とにかく直近の人間を撃ち抜くと思ってくれていいっ! とぉもかくううぅぅ! あなたたちを殺人罪で裁くことはっ! 現代の法では不可能だからぁ! そんなものに気兼ねすることなくっ! 存分に殺しちゃって頂戴ねぃっ!」


「そぉもそもぉ! そのビームで撃たれた相手はぁ! 被弾から10秒以内の心臓麻痺でお亡くなりになるからぁ! だぁれも! あなたたちが殺したなんて証明、んでっきないのよぉ!」


「たぁだぁしいいぃぃ――! ここから注意事項よぉ、よっく聞いてねぇっ!」


「祭りの間にぃ! ひとりが撃てるビームの数はぁ! んんううぅぅ――! 一回ポッキリッ! それを撃ち終えた参加者はぁ! その後っ! その回の祭りの参加権を失うわっ!」


「またぁ! ……ここからほんと重要よ! ……各人、その一回ポッキリの発砲で殺せる相手はぁ……。各々っ! 自分が、『この世でもっとも殺したい相手』っ! そのたったひとりの対象にしか効果がないっ!」


「さらにっ! この銃弾を発射できるのはぁ! 今回っ! あなたたちが住む、K県S市! その中でもぉ、C町1〜5丁目に限られるわっ! 祭りが始まったらまず、使用可能領域を確認することをぉ、んおすすめしちゃうっ! ちなみに各々のターゲットも、基本的にはその区域を生活区にしている人間だから、『ぶち殺し』になんら、不便はないわっ!」


「ああぁ――っとぉ! それとっ! 言い忘れてたっ! 参加者の誰かが『ぶち殺し』を成功させた時点でぇ! 今度のお祭りはぁっ! 閉幕っ! 終演っ! お開きよっ! その時点で残りの参加者からぁ、参加権も失われるから、気を付けてねぃっ!」


「ではぁ! 説明は以上で……。……いや、ちょっと待て。一番大事なこと言ってないやんけ……」


「……!? ……んじゃなくって! 違う、いまのなし! んんんんじゃなくってええええぇぇ――!」


「これ言わなきゃ始まらないわっっっ!! 右手で作ったそのぉ! んピストルっ! そこからビームを出す、魔法の言葉っ! そ・れ・はぁ――」



 

「『ぶち死ね』」



 

「これはぁ! どんな文脈で発声されてもぉ! 発動と見なされるわっ! んじゃあみんなぁ! 気を付けて、行ってらっしゃいっ! 目覚めたときから、参加者全員が参加権を失うまで、ずっとこのお祭りは続くわよっ! レッツ・フィイイィィバアアァァ――!!」



 

「……あ、『ぶち殺し』を成功させた人には、ささやかながら景品もあるってよ?」



 

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