神様失格

もっけ

第一話 神様失格

「真壁裕太…いや、まかべん。君の人生は終わったんだよ、まっかべ〜ん!」


「はあっ!?」


何もない空間に、一人の阿呆ヅラかました男性が机の椅子に座り、僕を指差した。

名札が机の上にあり、そこには拙い字で「すけぽん」と書いている。


「誰だてめぇ!?」


すると、その男性はすくっと立ち上がる。黒い短髪であり、更に俺と似た容姿の姿で同じくブラックスーツを着ている。しかし、表情は雲泥の差。阿呆ヅラにしか見えない。いや、俺と同じ顔なのだがそこらへんに漂う雰囲気が阿呆ヅラを出している。


「ふっふっふ、僕の名前はすけぽん!あっ、君の日本で言うところの神様だよ!今は君の容姿を間借りしてるんだ!僕ら神様は容姿とか曖昧だからね、まかべんべん!」


こいつの話が続かないので殴りたくなる拳を抑えている。

すると、すけぽんと名乗る阿呆ヅラ神が指を自慢げにピッと立てる。

その雰囲気に俺は腹が立った。

くっそ腹立つな、こいつ!


「で、なんで?まさか、天国行きを告げる為に来たのか、てめえ!?」


「てめえとはなんだよ、まかべんべん!僕はここの偉い神様なんだぞ!そうじゃないよ、まかべん!天国っていうのはめっちゃ不変的で代わり映えしない退屈な場所だから粋な計らいで異世界に転生しようとしてるのに!」


「代わり映えしない?」


「そうだよ、よく考えてみなよ?あそこはおじいちゃんおばあちゃんになった人らばっかだし、将棋も囲碁もない!材料ないからね!だからといってお腹減らない!料理作ろうにも材料ないからね!だから、そんな、まかべんが思ってるほど楽しいとこじゃないよ!」


「ふ、ふむふ〜む、確かに納得はできるかな。ところでさ俺の死因は?」


「あ、そっかそっか。ええとね、まかべん、これ言わないといけない?僕、めっちゃ怒られそうな気がするよ」


すけぽんと名乗る神様がファイルを机の引き出しから取り出し俺をチラ見する。


「いいよ、怒んない」


「まかべんは、バナナの皮で足を滑らせ後頭部を直撃して救急車ピーポーピーポーで亡くなったんだよ」


我ながら笑いたくなるような無様な死に方だった。すけぽんはさっと空気を察し机の引き出しにファイルを仕舞う。


「わ、わかった。ところでさ異世界とはどうゆうとこだ?」


「おおっ!そうだね!君らの世界樹の●●とかに近いよね!スライムも出るしゴブリンも!いろんなモンスターがいる中で地下迷宮を目指してる冒険者がいる世界なんだ!そうだ、まかべんは僕の粋な計らいで初期職業から好きなの選んでよ!騎士とか剣士、魔道士に僧侶とかあるよ!僕は気長にワインを飲むから待ってるよ!」


と、言うとファイルを僕の足元へ投げる。なんだかんだ言って死因を笑わなかったあたりまだ常識的な神様なのかもしれない。


「じゃあ……騎士で」


すると、ファイルがふっと消えすけぽんの元へ戻り、足元に魔法陣が現れ光りだす。

すると、


「あぁ〜ん!」


すけぽんがずっこけて魔法陣に乗っかかった。

しかし、そのまま、魔法陣はしゅんと輝きだし眩い光に包まれたのである……。


「ここが、異世界か!街中にもいっぱい人がいる!……すまん、大丈夫か?すけぽん?」


神様までついてきてしまったのだが、大丈夫なのか。

すけぽんは呆然とした顔で街中をきょろきょろと見つめている。


「ま、まかべ〜ん!無職の僕が冒険者のいる異世界に来ちゃった〜!あぁ〜ん!ま、魔王を、地下深くにいる魔王を倒さなきゃ帰られなくなっちゃった〜!」


悲しくも神様の威厳とか関係なしに街中で泣きつくすけぽん。


「む、無職なんだな!?とりあえずそれをどうにかしよう!あ、あそこに冒険者の酒場みたいなのが!って、ここの文字が俺、読めるのか!?」


「あ、そ、そうだね!い、異世界転生特典でこちらの現地の言葉はわかるよ!ぼ、僕もだいすきなRPGの異世界に来ちゃったしここでめげたら神様失格だもんね!よおし、冒険者の酒場を目指すぞ、えいえいや〜!」


すけぽんと一緒に冒険者の酒場へやってきたのだが、そこで基礎職を選ぶことになった。

そこには、


太刀弥助(すけぽん)「僧侶 Lv.1」


となっていた。こいつ、役に立つのか……?そもそも、なんでフルネームが日本っぽいんだ?


「す、すけぽんの苗字と名前は昔の戦国っぽい何かから思いついたんだよ!だから、深い意味はないよ!そ、それよりもLv.1とか危ないよね!?ぼ、僕、神様なのに!とか思ったけど、ここの職業に神様なんてものはないからこんなことになっちゃった!十中八九、まかべんの足手まといになりそうだけど……」


「いんや、僧侶がいないと回復はできんから。後は魔道士とか攻撃職の冒険者を集めるために掲示板に冒険者募集中の紙を貼っておくか」


こうして、俺と駄目神様と次に来るであろう冒険者の地下迷宮の冒険が始まったのである。

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