第29話 王都へ出発しよう
職務怠慢な冒険者に対し冒険者ギルドにクレームを入れ、彼等とギルドに賠償金と新しく手配されるまでの間に発生する負債に慰謝料を請求した。
怠慢な冒険者達はギルド抹消の上に借金奴隷となったそうだ。冒険者ギルドも私にまた借金する形となったので、今度こそはまともな人材を派遣して欲しいものだ。
話は変わるが商業ギルドのギルドマスターであるアンソンの情報からカサンラカを治めているのはナヴァール公爵家と伺った。取り次ぎをして貰うべく私は献上品を用意するために一度地球に戻ったのである。
献上品は日本で皇室御用達となっている梵・超吟・純米大吟醸、華真珠の指輪、北出与二郎作の着物セット、岡山銅器『 菊花繁栄 』透かし花器、米沢牛
用意した品々を見てアンソンが
「このような品々は国宝に相応しい物ですよ!」
と絶叫していた。
実際に献上品に注ぎ込んだ金額は500万を超えたのだ。利害関係を築ければ良いけど、万が一私の行動を邪魔した場合は国を捨てて違う所で出直せば良い。
「ナヴァール公は、堅実なお方です。Aランク冒険者であり、発明家の貴女を悪用しようとは考えないでしょう。貴女の機嫌を損ねるよりも
「とは言っても公爵とは面識が無いからなぁ。いきなり貢物を送られても困るかも?」
私だったら受け取り拒否してしまうだろう。
「もう直ぐ社交シーズンですし、王都へ私と一緒にナヴァール公へ会いに行きませんか?」
「私は貴族に対する礼など出来ぬぞ?」
「大丈夫ですよ。あまりにも無礼な態度を取らない限りは寛容なお人です。」
「それなら良いか…」
一応礼儀作法はライリーやソフィアに叩き込まれているから大丈夫だと思うが、大貴族相手にするのは気が重い。
「では出発は明後日で如何ですか?」
「分かった、それで頼む。護衛は私とアンがするから安心してくれて良い。身一つで屋敷に来てくれ。」
私は席を外して商業ギルドを後にした。
カサンラカから王都に行くまで馬車で3ヶ月かかるそうだ。そんなに間を開けてられない。
食材と着替えを
「待たせたな。」
「いや、思ったより早い。先ずは郊外に出よう。移動手段は私が持っているから安心してくれ。」
私の移動手段と聞いて馬車じゃないのか?と聞くアンソンの問い掛けには応じず、街の近郊まで徒歩で出てきた。
「な、なぁ、何だこりゃーっ!!」
「そ、そうですよ!!鉄の塊じゃないですかぁっ!!」
キャンピングカーを見てビックリするアンソンとアンに
「私が作った車だ。これで移動する。」
キャンピングカーを案内する。キッチンやトイレ、冷蔵庫の使い方を説明して出発だ!
アンソンが是非とも特許を!と喚いていたが、キャンピングカーの特許を出すつもりはない。
「ベットがふかふかですよ!」
「この箱は冷えているぞ!?どういう仕組みだ?」
わいわいと賑わう二人に車を運転しながら
「箱は冷蔵庫って言う代物だよ。飲み物が入っているので好きに飲んで良い。アン、ベットで跳ねないようにね。下の階は私とお前で一緒に寝るんだから、ぐしゃぐしゃにするなよ。あぁ、2階はアンソンさんが使ってくれ。」
アンに注意をしておく。寝る時にベットがぐしゃぐしゃになっているのは嫌だ。
二人は車内を探検し終わったのか、ジュースを飲みながら窓の外を見て
「この乗り物は馬車よりも早いな!それに揺れない!やはり特許を!」
「アンソンさん、ヒヨリ様は特許を出さないって言われてましたよね。あまりしつこいと窓から放り捨てますよ。それにしても早い!もうクルーク山脈が見えてきました!」
興奮していた。
車で移動して5時間が経過したので昼食の準備を始める。
本日のメニューはカニカマと卵のとろーり天津飯と大根としめじの中華スープに餃子だ!
ご飯を炊いてる間に餃子とスープを作る。
次に天津飯を作る。ボウルに卵、カニカマを割きながら入れ、合わせて溶きほぐす。小鍋に甘酢あんの材料を入れて耐熱性のヘラで混ぜながら中火にかけ、とろみがついたら火からおろす。フライパンにサラダ油をひき、中火で熱し、カニカマを入れた溶き卵を流し入れて菜箸でかき混ぜ、半熟状態になったらごはんを盛った器に乗せて、あんを掛けたら完成だ!
「ご飯が出来たぞ!」
「おお!これは何だい?」
「あ、初めて食べるのですね!」
「カニカマと卵のとろーり天津飯と大根としめじの中華スープに餃子だよ!」
アンソンにはスプーンとフォークを、アンと私はれんげと箸を持って
「「「頂きます」」」
ご飯を食べる。
「これは卵がトロトロして美味しいですね!米との相性抜群です。甘酸っぱい味が癖になりそうです!」
天津飯を美味しいと食べるアンソンとは別に
「もちもちの皮、一口食べると溢れる肉汁の餃子が美味しい!これにビールがあれば最高なのに!!」
ビールが飲みたいと通な事を言い出したアン。
確かに餃子にはビールが合う。だが、私は車を運転しているのだ。私が酒を飲めないのに二人だけ酒を楽しませるのは癪なので聞かなかった事にした。
「このスープも大根に味が染みてて美味いな。ヒヨリが料理上手とは知らなかった。」
「
ふふん、と自慢するアン。料理スキルは自慢出来るが、レシピは私のアイディアではないよ。言わないけど…
「これを
ぐいぐいと来るアンソンに
「分かった、分かったから。帰ったらメニューに加えるよ。」
メニューに加える事を了承した。メニューに加えたら自動的にレシピの特許取得になってしまうが問題はない。
「この度の献上品も素晴らしい物ですが、このような美味なる食事はもっと貴重かと思います。公爵家で腕を振るってみては如何ですか?」
アンソンの提案に
「そうは言っても他人に厨房を任せるとは思えないのだが?」
向こうからお断りされるだろうと言えば
「直接貴女が料理を作るのではなく、料理長に教えれば良いのでは?
問題ないとのこと。確かに
「交渉はそっちでしてくれるなら別に良いよ。」
全部丸投げにしてみた。交渉事は面倒だし、商業ギルドのギルマスなら貴族相手に渡り合えるだろう。
私達は車で王都へ向かうのであった。傍から見たら鉄のモンスターが街道を爆走していたと噂になるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます