第17話 燈由、屋敷を買う

 私は商業ギルドに来ていた。

 目的は屋敷を買うことだ。宝石の買い取りもせっつかれているが、先に店舗兼自宅になる物件を買いたい。

 「すみません、タオさんからの紹介で来たんですけど。」

 受付嬢に紹介状を渡すと

 「ヒヨリ様ですね。直ぐにギルマスを呼んできます。」

慌ててギルマスを呼びに行った。

 「期待の新人ルーキー、待っていたよ。私は商業ギルドのギルドマスター、アンソン・ラダだ。ダンジョンの宝石を買い取らせてくれるのかい?」

 「ダンジョンの宝石を卸すのは後日でお願いします。今回は店舗兼自宅になる物件を探しているんだ。」

 「分かった。ダンジョン産の宝石は楽しみにしているよ。おーい、カレナ!資料を持ってきてくれ!あとは任せた。」

 カレナと呼ばれた女性が分厚い資料を持って来た。

 「こちらへどうぞ。」

 一番広い商談スペースに案内された。

 「どのような物件をお探しですか?」

 「そうだね、従業員が20人が住めて広い店舗に出来そうな物件が良いな。キッチンとお風呂が充実していると良いな。」

 私が出した条件に

 「そうですね…それですと大商人の屋敷を手直してはどうでしょうか?離れもありますし、十分ご希望に叶うかと思いますよ。大通りに面した屋敷と大通りから少し離れた屋敷があります。」

あっさりと提案される。

 「間取りとか教えて貰えるかな?」

 「最初の物件は離れが2棟あります。母屋は8LDKになります。次の物件は離れが4棟になりますが、こちらは傷んでいるので立て直した方が良いですね。母屋は12LDKになります。」

 う~ん、狭いのはちょっと困るなぁ。でも立地が良いから迷う。

 「因みにいくらになる?」

 「最初の物件は白金貨13枚です。その次の物件は白金貨10枚になります。」

 値段の差がヤバいね。それにしても高いな。

 「両方見に行くことは出来る?」

 「大丈夫です。これから行かれますか?」

 「お願いします。」

 こうして私は内見をする事になった。

 一件目は大通りに面した屋敷を内見する。とても綺麗な建物だ。思ってたよりも母屋が広いが、離れが2棟しかないので増築すると庭が圧迫されてしまう。もう一つの方を確認すると離れは4棟あり、ボロボロだが広い。庭も十分に広さがあるので、中規模ぐらいの畑を作ることが出来そうだ。母屋は綺麗なもので、一階はエントランスが吹き抜けになっているので、少し手を加えて店舗にするのも良いかもしれない。二階にはキッチンとダイニング、浴室に2部屋あった。どちらの部屋も20畳ぐらいはある。3階は3部屋、4階は5部屋、5階は2部屋に屋根裏部屋があった。各階に汲み取り式のトイレが設置されている。

 「この物件にするわ。」

 少し大通りから離れていてもこれだけ広ければ問題ない。それにギルドから遠くないし、物を売るのも問題ないだろう。

 「畏まりました。ギルドに戻って手続きをしましょう。」

 ギルドに戻り、私は屋敷を一括購入したのだった。



 屋敷を購入したからには改装したいと思う。離れの立て直しも必要になるし、私は地球に戻って建築デザイナーに離れと母屋のデザインをして貰った。勿論、屋敷の内は写真に収めてある。その上で1階と2階を店舗に3階は食堂、4階と5階は宿泊施設に屋根裏は私の住居とデザインして貰ったのだ。4階と屋根裏部屋には風呂を設置する場所も入れてある。

 デザイン画を持って私はウォーズへとんぼ返りした。カレナに紹介して貰ったドワーフ職人の元に訪れる。

 「カレナさんからの紹介で来たヒヨリと言います。ロレンツォさんはいますか?」

 工房にいるドワーフに聞いてみる。

 「親方なら奥にいる。紹介状は?」

 「はい。」

 紹介状を渡せば、中を確認された。腕の良い建築家とは聞いていたが、紹介制ってことは拘りがあるのだろう。

 「おう、ちょっと待ってな。親方ぁー仕事の依頼だ!!早く来てくれー」

 大声で親方を呼んだ。

 「何でぇ、急ぎの仕事か?」

 のっそ、のっそと奥から出てきたドワーフの男は私を見て

 「餓鬼が来る所じゃねーぞ」

不快そうな表情かおをした。

 「客だよ。屋敷をリフォームして欲しい。4棟の離れの立て直しと母屋を改装して欲しいんだ。」

 「金払えるのか?」

 胡散臭そうに私を見るドワーフの男に

 「前金で白金貨1枚払う。完成したら白金貨3枚を支払おう。特急で仕事をして欲しい。」

白金貨1枚渡した。

 「すまん、俺の名前はロレンツォだ。竜の根城の親方をしている。離れはどのように立て直すのか希望とかあるか?」

 私は建築デザイナーに依頼して描き起こして貰っていたデザイン画を空間魔法アイテムボックスから取り出した。

 「一枚目が離れの建物で二枚目が母屋の内装のデザインだ。離れは4階建てで3LDKが2棟、1LDKが2棟でお願いしたい。各部屋にはキッチンと風呂、トイレを付けてくれ。母屋は1階と2階は店舗、3階は食堂、4階と5階は宿泊施設、屋根裏は私の自宅になる。キッチンが2階から3階に移動するのと屋根裏に増設したい。風呂は4階と屋根裏に設置して欲しい。トイレは各階数に2つ、屋根裏には一つ設置をお願いする。」

 私が用意したデザインを見て感嘆するドワーフ職人達に要望を伝える。

 「それは良いが、風呂となると金がかかるぞ。風呂は貴重だからな。」

 「その分の料金は上乗せするから問題ない。質が良く安価な物を頼む。親方なら伝手があるだろう?紹介料も入るし丁度良いんじゃないか?ついでに家具職人に伝手があるなら離れの家具一式揃えて貰いたい。予算は全部屋で金貨100枚出そう。」

 「家具に金貨100枚も出すのか?」

 予算の多さにビックリするロレンツォに

 「長く良い物を使いたいからね。直ぐに壊れる物は要らないよ。腕の良い職人に頼んで欲しい。仲介料も貰えるんじゃないか?」

お金の問題ではないと伝えると納得した。

 「そうだな。にしてもこの建物の構造は凄いな。紙も高いだろう?」

 「建物の設計は知り合いに頼んだんだ。特許は出す予定が無いから好きに使って良いよ。デザイン画も必要だったら受け取って欲しい。」

 私には無用の長物だからねーとデザイン画を渡せば

 「これを譲って貰えるなら金は前金だけで良い。風呂や家具代も前金に含んでくれて構わん。」

前金だけで依頼を受けてくれるそうだ。ラッキー!

 「ありがとう。お礼に私の国の酒でも皆で飲んでくれ。きっと気に入ってくれると思う。」

日本酒、ワイン、ウイスキー等を一通りロレンツォに渡す。

 「有難く頂くぞ。着工は三日後になるが良いか?設計図から見ると大体三ヶ月ぐらいはかかるだろう。」

 「それで構わない。」

 了承し、契約を交わした。こうして時間も大分過ぎた頃に私は工房を後にした。

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