第2話 深淵の隠者

 夕暮れの空は真っ赤で、異次元のような鮮やかさを見せていた。街は赤、青、黄色のネオンが点灯し彩り見せていた。本日は、ハロウィンである。若者達が魔女や勇者などのな奇抜なコスプレをし、酒を飲みながらワイワイ盛り上がっていた。

そんな中、オズは癖の強い黒髪にラフなジーンズ、肩にはライフルを担いでおり場にそぐわない姿をしていた。

「ふー、全く…ただ騒ぐだけの何も得るものがない祭りの何処が楽しいのかね…」

オズは、頭をボリボリかき溜息を漏らした。

 時が経過すると、辺りはドライアイスの様な乾いた冷気が立ち込めてきた。

向こうの建物の角の暗がりの方から、とんがり帽の魔女の姿をした少女が交差点を悠然と歩いていた。そして、その時辺りの人々は、意識を失いドミノ倒しのように倒れていった。

「奴か!?」

オズは、照準を少女に合わせ引き金をひいた。

この、独特な異様な空気は間違いなく奴ー

『ダークネス』である。

オズの弾いた弾丸は蒼白い光を放ちバチバチ音を立て、少女の眉間に命中した。すると、少女は急に動きを止めた。

そして、その影が急に小刻みにゆらゆら揺れ、その影から黒いマネキンの様な形をした化け物が出現した。少女は、その場で倒れた。

 影は、ガクガク震えて体内からバチバチ眩い光を発した。目が皿のように円くなり、赤く光る。口は横に裂け、中からギザギザの歯と長く伸びた舌を出した。少女の首はジグザグにネジ曲がりそして延び、オズ目掛けて襲ってきた。

「ギャハハは!今宵は愉快な宴になりそうだ…こんなに美味そうなご馳走がうじゃうじゃいるなんて…」

低くしやがれた声が、辺りを黒で覆い尽くす。まるで、悪魔の様なおぞましい声である。長く伸びた舌からは、よだれが滴り落ちる。

オズは、怯むことなく尽かさず次の引き金を弾いた。弾丸は、強烈な蒼白い光を纏い魔物の額に命中した。

 魔物は、けたたましく荒い声を上げながら蒼白い焔に包まれた。

「くっ…貴様…何者なのだ…?同胞じゃあるまいな。」

「ああ。俺は、気配を隠すのが得意なもんでね。人間のフリするのは朝飯前さ。」

オズはそう言うと、再び引き金を弾いた。

魔物は、か細く弱々しい声を出しながら焼失していった。

 オズは尽かさず蒼白い鎖を掌からだした。そして、少女の身体をぐるぐる巻きにした。すると鎖は眩い光を放ち、消失した。



「ありがとうございます。助かりました。」

魔物が取り付いていた少女を抱き抱えながら、父親が深々とお辞儀をし、懐から金の入った封筒を手渡した。

封筒は異様に硬く、オズは不思議に思い中を確認した。

「え、?こんなに要らないですよ。下級のダークネスでしたし…」

オズは、お札の枚数を確認すると戸惑いを見せた。

「いえ、これは、私の罪滅ぼしです。どうか、受け取ってください。」

父親はそう言うと、再び深々とお辞儀をしその場を後にした。



「あの、父親…」

オズは、父親の後姿を診ると強い違和感のようなものを感じた。



オズは、不審に感じ父親の後を追うことにした。


「ルミナ…あー悪い。ちょっと、気になってることがあって…」

「何…」

「あの、クライアント…何か、妙なんだよ。」

オズの中で、胸に引っかかるような強くざわざわしたものを感じたのだ。




父親は、少女を抱き抱えると車に乗せ森の奥まで車を走らせた。しばらく森の奥へと走っていくと、奇妙な教会が姿を見せた。

 父親は、少女を抱き抱えるとドアをノックした。

 すると、中から長身の白装束の女が姿を現した。

「ああ…お恵み、感謝致します。」

父親は、深々と頭を下げた。

「…で、偵察は出来たのか?」

女は、目を細め穏やかな顔つきで父親を招き入れた。

「ええ。あの街は、ご馳走がたんまりあります。中でも、極上のご馳走が…」

「ほほう。それは、どんなものだ?」

「一見、人間だと思っていたんですけど…実は、アレの血の臭いを感じまして。多分、アイツ…ハンターかと…」

「ふふふ。まあ、」

女は、不気味に微笑んだ。

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