進路

 高校に入学してから、少しずつ進めていく進路の話。3年生の秋となれば、ほぼ決定してないといけない。

 僕は就職希望を出していた。担任の先生からは「この時期に就職希望出してから、進学に変更は出来ないからね?」と確認をされた。

 進学して特に勉強したい事もない。家は母子家庭だから厳しい、と言うのも理由のひとつ。

 

 コーヒーバリスタ…かぁ。


 コーヒー淹れるのが好きだから、じぃちゃんのお店を継ぐのも良い。でも、じぃちゃんはまだ現役で頑張って欲しいからなぁ。

 普通に会社に就職するとなると…うーん…


 考えれば考えるほど、頭の中はぐるぐるとまわり、またスタート地点に戻る。まるで双六すごろくのようだ。


「うーん…」

 放課後、店によりカウンターに座りながら考えていた。

「なにを悩んでるのか。」

 じぃちゃんが笑っていた。

「まぁ、ちょっとね。今、進路を考えている所なんだけど決まらなくて。」

「ふむ。決まらないなら、とりあえず大学にでも行くかね?」

「いや、ただだけで大学に行きたいとは思わないんだな。だから就職かなと。」

「それも、ただだけの就職になる。」

「そうなんだけど!お金がかかるか稼げるかって言ったら、稼げる方がいいじゃないか…」

「母さんはなんて言ってる?」

「決まってるじゃないか。」

【翔吾の好きにしなさ〜い】

「あれは、まぁ…いつもそうだな。」

 じぃちゃんは笑っていた。


 カラン…とドアの鈴がなる。

「お、翔吾みっけ!」

 入ってきたのは裕太だった。

「おじいさ…じゃなくて、マスター!カフェオレひとつ!それとワッフルの生クリーム。」

 裕太は気取きどるように注文をした。

「なにカッコつけてるんだ?」

「もうすぐ18歳だからな。」

「ああ…誕生日アピールか。」

「おうよ。プレゼント期待してるぜ。」

「で、裕太はどうして進学えらんだんだ?」

「おまっ…話をらしたな。仕方ないから教えてやろう。もちろん!だ。」

 僕もじぃちゃんも一瞬の間を置き、笑った。

「なんだよー。俺、変なこと言ったか?」

 裕太は口をとがらせたけど、タイミング良くカフェオレとワッフルが出てきたので、すぐに忘れてワッフルを頬張ほおっていた。

 そんな裕太を僕は羨ましく、誇らしいと思う。

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