空虚

 こてつを亡くしてから1週間がたった。

僕は学校へ行って、帰って寝る。店も行ってない。後悔だけが頭の中を駆け巡り、他はなにも考えられなかった。

 

ベッドにもぐっていると、ノックの音が聞こえた。返事をする間もなく、ドアを開けると同時に「入るぞー!」と裕太の声がした。

「翔吾、お前はモグラか!起きてるんだろう?」

「なんだ…なんか用事あったか?」

 布団の中から返事をしてるから、僕の声はボソボソと篭っていた。

「遊びに行こうぜ!」

「いや…そんな気分じゃないんだが。」

「付き合えよ。」

「悪いけど、ひとりに…」

 言いかけた所で裕太に布団を

「おまえさー、いつまでそうしてるつもりよ?鏡見てみろよ。まるで死人だぜ?」

「なにもする気になれん。」

「こてつがいなくなったのは悲しいだろうさ。けどよ、おまえは自分を責めて悲劇のヒロインになってるだけだ。猫って賢いんだぜ?多分、こてつは自分の病気に気づいてた。そして自分が死ぬ時は、おまえの前で死にたくなかった。おまえの悲しむ顔も見たくなかった。だから!だから、病院で死んだんだろう?」

 頭が痛い。気持ちが悪い。

「大丈夫か?吐いてスッキリしちまえ。」

 裕太は僕の顔の前に、ゴミ箱を差し出した。

「いや、流石に…」

 ゴミ箱を持って立つ裕太を見て、僕は「ぶふっ」と吹き出すように笑った。

「なんだよ!」

「フライドチキンの…あの店の前に立ってるおじさんみたいだ。」

「え…おい、俺はあんなに大きくないし、老けてねーぞ?」

 僕は笑った。笑えた。そして泣いた。

 

 

 

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