裕太との出会い

「明日、美術部のメンバーと先生を連れて、店に行くからな。」と久野裕太くのゆうたから連絡が来た。

 

 僕は中学になるまで友達はいなかった。

 集団の中にいてもひとりで遊ぶのが好きで、どちらかと言うと【いじめられっ子】だったし、母さんには「小学生までの翔吾は、会話すら出来ない宇宙人だったからねぇ!」と言われるし。僕自身、小学生の頃までの記憶は曖昧だ。


 久野裕太との出会いは…今思い出しても笑ってしまう。

 僕は、中学生になっても相変わらず【いじめられっ子】だった。

 ある日裕太が僕に絡んで来て、僕は珍しくブチ切れて、裕太のシャツを掴みにかかった。

 ブチッ!

 音と共に、ボタンが何個か吹っ飛んだ。

「あ、すまん。」

 僕は謝った。

「クソ…。」

 ボタンが飛んだ事により、僕は冷静にすなり裕太は引き下がった。

 多分、その日裕太はお母さんにボタンを縫い付けて貰ったのだろう。なんて言い訳をしたかは知らない。


 そして翌日、裕太はその腹いせにまた絡んで来た。学習能力のない奴だと思った。

 裕太が逃げたので、僕は裕太を追いかけた。

 僕の方が走るのが早く、裕太に追いつきシャツを引っ張った。

 ブチッ!

 昨日のデジャヴだと思った。シャツのボタンは見事に飛び散った。

「あ、すまん。」

「またかよぉー!!」


 その後、裕太にシャツを脱いで貰い、僕がシャツのボタンを縫い付けて…裕太とは普通に話せる友達となった。ただそれだけのこと。


 ちなみに母さんにこの話をしたら、お腹を抱え涙を流し、「あんた、よくソーイングセットなんて持ってたわね。」と大笑いしてた事はよく覚えている。

 僕は常に普段から、ハンカチ、ティッシュ、絆創膏、ソーイングセットは持ち歩いている。

 もちろん、高校生になった今も。


 ベッドでゴロゴロしながら、裕太からの連絡を携帯で確認した僕はワクワクした。

「さーて、明日はかな。」

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