決意だけで記憶が消えたら苦労しません〜マギヤの女子に関する記憶全部消える(仮)解答編
霜月二十三
第1話〜第3話解答編
第1話
今日は、私、マギヤが、聖女の日常を警護する班の一つ、ウリッツァ班に帰ってきてすぐのウリッツァ班の当番日。
いつものようにヴィーシニャさんの左後ろを歩く。
この位置の右利きの人間が、手に刃物を持ったなら、その気になればいつでもヴィーシニャさんの心臓を刺し殺せる。
そこまでしなくても、私が手を伸ばせば届く距離にいるヴィーシニャさん……。
ああ……ずっと人形でよかったのに。
よく見ている誰かの指摘がないと、違いが分からない程、普段と大差がなくて。
私の前に肌をさらさず、私に抱きつかず、私からつきすぎず離れすぎず。
いらない、いらない、いらないことばかり!
ずっとシラを切り通していれば、魔法を解かなければ、あれを了承しなければ、あの温もりを知らなければ!
こんなおもいは、おもいは、おもいは――弾けて消えるまで!
……目を開けると、保健室の天井と私を覗き込むトロイノイやウリッツァ、あと私の弟プリストラがヴィーシニャさんの背を守っていた。
漠然と「……ここは?」と問いかけてみる。
「保健室、仕事中いきなりマギヤが倒れるから……!」
ベッドの外のトロイノイ以外の三人も、トロイノイの言葉に激しく同意する。
「ああ……ごめんなさい。……ところで、貴方は? あと……そちらの、桜色の髪などが美しい女性は?」
私はそう言ってヴィーシニャさんやトロイノイを始めとした異性のことを忘れたふりを始めた。
もちろん、聖女や聖女親衛隊のことも、聖女の日常を警護する班が聖女邸で聖女と共に暮らすことも、かつて贈った私の監視魔法付きペンダントのことも忘れた
第2話
翌朝、私は自分の部屋を出て、ベッドで仰向けに寝てるウリッツァのパジャマのトップスを
たくましい胸の上に寝そべり耳を当て、目をつぶり、ウリッツァの規則正しい心音にうたた寝し、
ウリッツァが起きたのを聞いて、
「おはようございます、ウリッツァ。今日もいい心音ですね」と挨拶する。
ウリッツァの「……マギヤ……重い……」という苦情を受けて、
私は「ん? ああ……ごめんなさい。一秒でも早く愛する貴方に会いたくて、つい……」と、にこやかに謝る。
はぁ、ウリッツァ……。
また、あの日のように裸で抱き合って、正々堂々愛し合えたらな……。
ウリッツァへの想いが体に表出しないうちに、私はウリッツァに「じゃあ、廊下でまた」と挨拶してテレポートで去る。
ウリッツァ――とプリストラの二人部屋の前の廊下で待っていると、寝巻きから着替えた二人が出てきた。
「おはようございます、ウリッツァ。……手でも繋ぎますか?」
「いや、何いってんのマギヤ――」
「ああ、いいぜ?」
ウリッツァが私の手を握って……「こっちがいい」と私はウリッツァと恋人繋ぎする。
一応プリストラにも挨拶して、三人で聖女邸の食堂へ「行きましょうか」。
第3話
聖女親衛隊日常警護班は原則、班で固まって朝食を取る。
それで私はトロイノイの見てる前で、ウリッツァに私の朝食の鮭を、直接あーんして食べさせる。
なんでも美味しそうに食べるウリッツァは可愛いな……頭撫でたい。
朝食を食べ終え、私は隣を歩くトロイノイから、こう話しかけられる。
「……ずいぶん、ウリッツァに尽くすのね?」
トロイノイからの質問に私は、本心も込めて「ウリッツァは素晴らしい人ですもの」と答え、さらにこう続ける。
「私の自業自得で二人になれないとはいえ、ウリッツァが私を受け入れてくれて、私もウリッツァを愛していることを忘れてなくて……今はそれで十分です」
一瞬、トロイノイの嫌そうな、辛そうな顔が見えたが、決して見つめないよう自分の顔を後ろのウリッツァに向ける。
すると、ウリッツァが私を見て
「オレを……愛してる、って、言ってくれるのは嬉しいけど……。……オレ、ヴィーシニャと付き合ってるからさ……」
「じゃあ今すぐその女と別れてください。『ヴィーシニャと正式に結婚して聖女邸を出るまでなら
衝動的に出た私の言葉を受けて、手近にいたプリストラの上腕の袖を握るウリッツァ。
なんです? その女々しい反応は?
私より若干背の低いプリストラを盾にするほど縮こまるなんて……。
責めれば責めるほど、あれこれ理由をつけて「今すぐは無理!」とごねるウリッツァに、私は舌打ちを隠せなかった。
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