第2話 養ってくれるVTuber義妹
街中を歩くこと十分弱。公園から割と近いところに綾花のマンションはあった。
「良い所に住んでるんだな」
「まあね。セキュリティ厳重だから、ちゃんとついてきて」
綾花の後をついていく。
何十ものセキュリティを進むと、部屋の前に辿り着いた。一番最上階か。景色が最高じゃないか。
「ひとつ聞いていいか」
「ん? なぁに?」
「ここに一人で住んでいるのか……?」
「うん、そうだよ。ここが一番安全だからね」
マジかよ。こんな豪邸みたいなマンションの最上階で悠々自適に暮らしているのか。羨ましいなぁ。って、俺も住めるのか……。
この子が養ってくれるみたいだしな。
玄関の扉を開ける綾花。俺はその後に続く。玄関も広いなぁ……。続く廊下。部屋の数も多い。でもって、出迎えてくれる猫。
名前は『もこ』らしい。
人懐っこくて可愛いなぁ。
「しっかし、凄い部屋だな。さすがVTuberのアキナだけある」
「ふっふーん。半年間でここまできました」
「すげぇ……」
投げ銭を毎日嵐のように貰っているんだ、これくらいの生活は出来るわけか。俺も貢献してるしな。微々たるものだけど。
「お兄ちゃんの部屋はこっちね」
「え、部屋くれるの?」
「もちろんだよ。ここね」
歩いて直ぐのところだった。
「あれ、でも既に生活感があるな」
「だって、ここわたしの部屋でもあるから」
「な!?」
つまりあれか、綾花と一緒の部屋に住むってことか!?
「ほ、他の部屋じゃ……ダメか?」
「だ~め。一緒に寝てくれないと住まわせてあげない」
「……ぐッ」
背に腹は代えられんな。それに、綾花と一緒とか最高じゃないか。ある意味、憧れのアキナと寝られるようなものだ。なにそれ凄い。
「おーけー?」
「おーけー」
「うん、じゃあ、決まりね」
決まってしまった。良かったのかなぁ……まあいいか。
荷物を下ろし、それから他の部屋の案内もしてもらった。
リビングはボール遊びができるくらい広い。良い眺めで開放感ありまくり。キッチンも整っている。大型冷蔵庫にレンジや炊飯器、調理器具などなど。
風呂・トイレは別。
風呂はジェットバス。デカすぎ。広すぎ!
他の部屋は物置部屋だったり、配信部屋、ペット専用部屋などなど……。ひとりで住むには広すぎる空間だった。
「いやぁ、圧巻だよ。これがVTuberの生活かぁ」
「実家のように気軽に過ごしていいからね!」
「綾花は命の恩人だよ。ありがとう」
「そ、そんなことないよ。でもね、お兄ちゃん」
「ん?」
「……綾花を裏切ったら許さないからね」
「……!?」
今背筋がゾクッとした。なんか今の綾花の目線……ヤバかったぞ。そういえば、アキナには“ヤンデレ”設定がある。……ま、まさかな。
けど、こんな可愛い義妹を裏切るとかナイナイ。あり得ない。
これから、俺こと『
荷解きを終えた俺は、リビングで寛いでいた。最高の景色を眺めながら、スマホでネット……なんて贅沢なんだ。
そんな中、キッチンから良い匂いがした。どうやら、綾花が料理をしているようだった。
「ちょっと待っていてね、お兄ちゃん。晩御飯作っちゃうから」
「マジ!? 綾花、料理できるんだ」
「当然だよ。だって、アキナでも料理配信とかしてるし」
あー、言われてみればそうだ。
アキナの人気は料理でもあった。やっぱり、料理ができる女子はモテるというか理想だよなぁ。
「何から何まで悪いな。俺にも手伝えることがあったら言ってくれ」
「お兄ちゃんは堂々と構えていればいいよ。養ってあげるから」
「だけど……」
「いいのいいの。これがわたしの夢だったから」
そこまで言われては仕方ない。なんだか綾花も幸せそうに料理しているし、邪魔しちゃ悪いな。俺はだらけていよう。
ゲームをしていると、綾花が料理を運んできた。
「おぉ、良い匂い。てか、料理豪華すぎ! 中華料理とか、すげぇな」
テーブルの上にはラーメンにチャーハン、餃子もあった。完璧なセットだ。これ、お店ってレベルだぞ。
「一緒に食べよ」
「お、おう。これは驚いた……なんてクオリティだ」
「普段はここまでしないんだけど、今日は記念だから」
「マジで感謝している」
いただきますと手を合わせ、さっそくレンゲでスープを味わう。
「どう、お兄ちゃん」
「うまッ! このしょうゆラーメン最高だな!」
「わぁ、良かった。褒められてわたしも嬉しいよぉ~」
俺は次に麺を啜った。丁度良い細麺で最高だ。う~ん、これは唸るほど美味しい。絶妙な固さでいい。更にチャーハンにも手を伸ばしていく。
パラパラで濃い味付けで最高しかないッ!
そのまま餃子も口へ運ぶ。……パリっとしていて食感が最高。醤油とラー油も完璧だ。美味すぎて脳がとろけるかと思った。すげぇ、すげぇぞ、綾花。
「…………綾花って最高のお嫁さんになれると思う」
「や、やだ、お兄ちゃんってば恥ずかしいよぅ」
顔を真っ赤に染める綾花は照れまくっていた。なんて可愛い。俺の義妹にするには、もったいなさすぎる気もするが――いや、義妹で良かった!
居場所をくれて、料理もしてくれて……しかも憧れのVTuberだとか、夢のようだぞ。
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