ピンクになりたかった
ひのはら
第1話
人生何が起こるか分からない。
まさか7年も所属した芸能事務所から突然契約を打ち切られるなんて、数週間前の
ずっとアイドルになることに憧れて、そのために小学生の頃から学校が終わればレッスンに励む日々。
勉強はもちろん、部活動にだって所属できずに目標に向かってひた走ってきたのだ。
あの時間は全て無駄だったのだろうかと、悲しむ間も無く夢実は衝撃的な出来事に見舞われていた。
「夢実さんって芸能事務所から契約切られたんですよね」
「ど、どうしてそれを……」
「夢実さんと同じ事務所に所属してる子から聞きました。いま困ってるんじゃないですか」
自分よりも5センチほど背が低いであろう彼女から、肩を押さえつけられた状態で迫られている。
噂通り瞳がぱっちりしていて可愛いだとか、今目の前にいる彼女の美貌に見惚れる余裕もない。
「……芸能科に居続けるための条件は二つ。事務所に所属しているか、SNSで10万人以上の登録者を誇る人気インフルエンサーであるか」
「……そ、そうだけど…」
「だから協力して欲しいんです」
顔をグッと近づけられる。
毛先がふんわり巻かれていて可愛い。
きっと毎朝手間暇かけてセットしているのだ。
「動画配信者として一緒に活動して欲しいんです」
一体何を言っているのかと、尋ねるよりも先に心が震えていた。
これが喜びか、緊張か、高揚感なのかもよくわからない。
芸能事務所に契約を解除されてから、信じられないことばかり起こっている。
目の前にいる下級生は、
天才若手女優として活躍する彼女が、突如芸能界を引退すると発表したのは今朝のことだ。
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