少年との出会い
「ふんふふ~ん」
照りつける日差しのなか僕は鼻歌を歌いながら次の自殺願望者を探す。
自殺願望者は地方の方が割と多く見つけやすい。そしてさっそく次の仕事ができた。
次の人間は細く小柄で真面目そうな見た目をしている学生だった。僕はさっそくその学生に声をかける。
「やぁ、死にたいかい?」
学生は動かなかった。耳が聞こえないのかと思い手話も兼ねてまた話しかける。
「おーい!聞こえないのか?」
学生と目が合う。
「君天使?」
なんだ喋れるのか。
「そうだよ!」
「嘘だね」
学生の言葉に驚きはしなかった。これまでの自殺願望者にも居たからだ。ただの飾りつけだの何かの演出だの。学生は続けて話す。
「天使はそんなに真っ黒じゃないからね。白い翼に輝く天使の輪。君はどれにも当てはまらない」
何故か不服な気持ちになったが当たり前のことなのですぐ水に流した。
「そうだね!ところで君は死なないの?」
学生がこちらをじっと見つめている。僕も笑顔で学生を見つめる。
「俺は、死ぬよ」
じゃあ!という僕の声に割り込み、でもと話を続ける。
「まだやりたいことがあるから死ねない」
よくいるパターンだ死ぬ前に何かをしたい人間。今から死ぬというのに何かをして何のためになるのか僕は理解ができない。
「じゃあ僕が手伝ってあげるよ!何がやりたいの?」
いつものように陽気な声で語りかけると、学生がポケットに手を突っ込み小さなメモ用紙を取り僕に渡してきた。
死ぬまでにやりたいこと
「うわぁ」
つい声に出てしまった。こんなの書く人間本当に居るんだな。
「これが君がやりたいこと?どれからやる?」
「君は失礼な天使だね。別に書いたっていいじゃないか」
心の声が漏れたのかと思ったがただこの学生が知的なのだと気づいた。だがその半面少年は口調が厳しくあまり話したい相手ではなかった。だがこの少年のもとに来たのだから逃すわけにはいかない。
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