⑥
※楓視点。
何か暖かいものに抱きしめられている事に気付き、私は目を開けた。
私の名を呼びながら泣き、そして私を抱きしめる騎士が目に入り、驚きで手に持っていたナニカを落としてしまった。
「カエデ、カエデ、生きていたのか」
生きていた。
ああ、そうだ。私は殺されて・・・・・・。
私は殺されて、だから許せなくて!!
始めに弓使いを、その次に格闘家を、そして魔術が効かない見張り兵を殺して魔道士を!!!!!!
「ゲホッ、ゲホッ!! 助けて!! 私、コイツに殺されそうになったの!!」
魔道士が騎士に向かって叫ぶ。
そう、私は彼女を殺そうとした。私を殺したこの女を。
そう思うと私の中の炎が燃え上がる、私を殺したくせに殺されそうになって騎士に悲劇面して縋ろうとするコイツが許せなかった。
今度こそくびり殺してやろうと手を伸ばした。
「いけない」
その手は騎士に止められた。
「いけない、絶対にダメだ」
「ああ、助けてくれるのね!! 早くその女を殺して!!」
止めに入った騎士に感激し魔道士は私を殺すように懇願する。
この至近距離じゃ、助からない。私はまた殺されるのか、家族や友人達が夢に出てきたあの夜に私を守ると誓ってくれた彼に。
彼は手に持っていた剣を。
魔道士に向けた。
「え?」
私は驚いた、それは魔道士も同じで。
「どうして私に刃を向けるの!? 違うでしょ!? 守るべき私じゃなくて私を殺そうとしたソイツに向けるべきでしょ!?」
魔道士は必死な形相で騎士に叫ぶ。
それに反して騎士は。
「カエデが理由無しで手をかけるはずがない。何をした?」
冷静にそう返した。
魔道士は騎士の返しに青ざめ、体をガタガタを震わせる。言えないわよね、私を殺したなんて。言ったらどうなるか解っているから。
「言えないのかい?」
「・・・・・・・・・・・・ねえ、どうしてソイツの味方をするの? 私の事を愛してるんじゃないの? ソイツは殺したのよ!? 仲間だったあの二人を!! どうして!? どうしてなのよ!?」
ようやく口を開いた魔道士は狂ったように叫んだ。
私は見ていただけの二人を殺した、許せなかったから。これは消えない事実。
これには騎士も私に怒りを向けるはずだ。
「もう一度言う、カエデが理由無しに手をかけるわけがない。カエデが手をかける程の理由をやらかしたのだろう、お前達は」
それでも騎士は私の味方を続ける。
なぜ? どうして?
「なんでよ、なんでなのよ!? どうしてソイツの味方をするのよ!?」
魔道士は信じられなくて半狂乱になり、此方を睨付けてきた。
騎士は抱きしめていた私を放すと今度は守るように前に出て、魔道士の首元に剣先を突きつけ。
「僕は誓った、彼女を守ると。ただそれだけだ」
力強く言い放った。
彼はあの夜の誓いを守るつもりなのだ、仲間に手をかけ、邪魔だからという理由で見張り兵に手をかけた私を。
「それだけ? 誓ったから? それだけの為に?」
「ああ、君の命よりも大事な誓いだ」
「わたしのいのちよりも?」
騎士の言葉に狂ったように叫んでいた魔道士はワナワナと体を震わせ、近くにあった燭台を手に持ち。
「ああああああ!!!!!!」
私達に殴りかかってきた。
「危ないもん振り回してんじゃねえーよ」
第三者の声と共に燭台と共に魔道士は壁まで吹き飛ばされ、激突した。
衝撃からか動けない彼女を尻目に私達は声の方、ベランダに目を向ける。
「魔女の力を感じて来てみたら、厄介な事になってるわね」
ベランダに居た人物はコツコツと靴音を響かせながら私達に近づき。
「私の名はアキレア、この世界で狭間とか異界とか呼ばれてる場所に住まう魔女よ」
ニコリと笑って挨拶をした。
※次回で終わりです。
※アキレアはノコギリソウの学名、花言葉は戦い、勇敢、治癒。
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