【完結】勇者から魔女になった女の子の話

うにどん

勇者から魔女になった女の子の話①

 私、卯月楓は異世界の脅威である魔王を倒すべく、この世界を束ねる王国によって召喚された勇者である。

 自覚はないけど周囲は私を勇者と言う。

 正直言って、うっとうしい。

 此処に来る前は私は只の高校生だった、そんな私が勇者だと言われても受け入れられなかった、それは今でも変わらない。

 でも、この事は言えない。気持ちは追いつかなくても勇者として戦わなければならなかった。


 この世界は魔王によって滅びに向かっていたからだ。


 魔王の力によって力を増大させた魔物達は無差別に襲い、男は殺され、女は繁殖のために連れ去られ、子供は奴隷として連れ去られる、そんな状況。

 一刻も早く魔王を倒さなければいけない。

 だから、私の気持ちなんて周りには関係ないのだ。それに魔王を倒さなければ私は帰れない。

 魔王を倒せば帰すと言われたのだ。家族に友人に会いたい、その一心で私は剣を振るう。

 異世界に強引に連れてこられ、ずっと孤独を感じている私にとって、帰る事が唯一の拠り所だった。


 幾日経っただろうか、私は仲間達と共にようやく魔王を倒した。


「はあ、はあ」

「ははは、まさかお前のような小娘にたお、され・・・・・・」


 ドサッと魔王は倒れ込むと煙のように消えた。

 これでこれで、私は帰れる!!


「やりましたね、勇者様!!」


 仲間の一人である魔道士が駆け寄ってくる。

 彼女の姿はボロボロだ、いや彼女だけじゃない、他の仲間達もボロボロだ。特に私の盾となってくれた騎士は魔王の最期の一撃から私を守るために意識を失うほどの怪我を負っていた。


「彼は大丈夫?」

「大丈夫です、私の治癒魔法である程度の怪我は治しました」

「そう、それは良かった」

「そうですね、後は帰るだけですね」

「ええ、そうね。帰るだけね」

「ええ、でも帰るのはの人だけです」


 魔道士は私の心臓に向けて隠し持っていたらしいナイフで刺した。


「貴方には死んでもらいます」


 私は蹌踉めきながらその場に倒れ込む、私の血が辺りに広がるのが見えた。


「お~い、終わったか~!」


 意識を失っている騎士を背負いながら格闘家が魔道士に声をかけるのが見える、その後ろから弓使いが歩いてくるのも。


「終わったわよ。騎士が気絶してて良かったわ~。コイツに入れ込んでたから、絶対に邪魔すると思ってたから」


 普段は私を労ってくれた魔道士が見下すように私を見る。ああ、これが彼女の本性なのか。

 格闘家は魔道士の話にそうだなと同意し、弓使いは私をチラリと一瞥した。


「それにしても哀れだな。魔王を倒したら用済みだから殺されるなんて」


 用済み? 私は用済みだから殺されたの?


「しょうがないでしょ。魔王の次に驚異になるのは間違いなく勇者であるコイツよ。



それにんだから、



それを知って暴れられたらたまったもんじゃないわ」


 そう最後に言って魔道士達は去って行った。


 私は薄れゆく意識の中、ハッキリと聞こえた。

 

 という言葉に私はずっと騙されていたのだと理解した。


 魔王を倒したら帰れるなんて嘘。

 私は最初から殺される事が決まっていた。

 ふざけるな、私を勇者として無理矢理喚んだくせに。

 ふざけるな、こっちは帰るために命がけで戦ってきたんだ。


――許さない、許さない、許さない!!!!!!


 一気に体が熱くなるのを感じた。

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