第48話 ラリー・フィールド2
1ヶ月後
俺は、ズィクタトリアへ戻ると、練習に打ち込んだ。
いやー、練習に戻るまでが、忙しかった。
事後処理をするのに、マイク・ジョーンズ、アザレア、マイケル検事に力を借り、延べ210万人いた構成員の中、100万人を社会復帰させることに、成功したが、残りの110万人は、逮捕されたり、新しくマフィア組織を作っているという…まだ、これが厄介で逮捕され、収監されてるロジャー・セラノを崇めたてつまってる連中だそうで、相手にするのに、骨が折れる。
因みに、今、俺が契約しているエディ・アラムプロモーションは、ユースティティアの下部組織のユートピアという組織の傘下だったが、見切りを付けて独立したそうだ。
だが、俺の戦いは終わらない。
いつか、交わした約束…ラリー・フィールドとの、兄貴分だった人との誓いを果たさなければならない。
あの偉大なるラリー・フィールドに誓って
※※※
「ハア、ハア…」
「どうした、スカーフェイスもう終わりか? 」
「うるせえ、あんたの鼻っ柱へし折るまで、やってやるよ! 」
「そうだ、その意気だ、来い!! 」
当時、18歳だった、俺は世間知らずの暴れ者だった、相棒のマークと共に、道場破りと称しジムに行き、練習生、プロとリングに上がり闘っていた。
その中で出会った、ラリー・フィールド…俺と同じ黒人で、身長もデカく190センチあった。
リング上で練習時でも、爽やかな笑みを絶やさない彼は、今まで出会ったきた中のボクサーでも、一際輝いて見えた。
初めて、相手してもらった時は、まるで相手にならなかった。
リングに上がり、俺のジャブやストレート、フック、そのデカイ図体で、躱し、ブロックされ、そして、鋭い一撃が俺を襲う。
忘れもしない、あの左ボディは俺をリングにへばりつかせた。
強かった、強かった、それまで路上でも負けなしの俺のプライドはズタズタになった。
だか、嫌な感じは、しなかった。
それから、俺はダマトジムに入門し、マークはマネージャーとして迎えいれられ、ラリー・フィールドを倒す事が目標になった。
ダマトジムに入門した俺は、2階のジムの寝床で、今日も歯が立たない事を悔しく眠れなかった。
そんな中、1階のジムの中でサンドバッグを叩いてる音がする。
寝れない俺は、気になって1階まで降りて確かに行った。
やっていたのは、ラリー・フィールドだった。
重いサンドバッグをグローブを着けて、凄まじい音ともに、叩いていた。
サイドステップ踏みながら、揺れるサンドバッグを自在に叩く様は、達人のようだ。
普通、サンドバッグは、揺らしながら叩かない、それは所謂、押すパンチでサンドバッグとグローブの接触時間が長く、素人が揺れてる様を見せつける為に、やることはある。
だが、ラリー・フィールドは違った。
バチン、バチン、と最短でグローブとサンドバッグとの接触で、揺れるサンドバックにパンチを叩きこんでいく。
「おっ! スカーフェイスか、どうした眠れないのか!」
「アンタこそ、こんなに真夜中に練習してるのかよ? 」
「普段は、朝昼やるんだが…試合の時間が夜中にやるからよ、こうして体を慣らしておくんだ」
「へー、そうなんだ、丁度、眠れないし…俺がスパーリングパートナーやろうか? 」
それに、ラリー・フィールドは、快く応えた。
「よし、私とやろう、お前も眠れるようにな!」
「へへ、少しは成長しているんだぜ、俺!」
「ほう、それは楽しみだ、バンテージ巻いてグローブを着けてきな」
俺はバンデージ巻いてグローブを着けて、リングに上がる。
ラリーは、リング上で待っている。
「よし、タイマーも点けたし始めるか」
「おう」
タイマーが鳴ると、スパーリングは始まった。
互いにリングをサークリングし、出方を伺い、先にしかけたのは、俺だった。
オードソックスなスタイルから、左ボディへ一撃を見舞うと、それをサイドステップで華麗に避けられた。
避けられると同時に、ラリーがサウスポーからワン・ツーをグローブ越しに当ててくると、グローブ越しに衝撃が顔面に伝わる。
なにくそと思い、俺は左アッパーで反撃をする。
「いいぞ、スカー、今のは避けづらかった」
何が、避けづらかった!だよ、涼しい顔でステップ踏みながら、避けた癖に、俺は接近し、右ジャブをダッキングで掻い潜り、右フックを放つ。
それを、見越してたのか左アッパーを合わせて来た。
まんまと喰らい、リング上に大の字になり、倒れた俺を心配そうに、ラリーは声をかけてくる。
「大丈夫か? 意識はあるようだな、サウスポー対策は左周りが基本、突っ込んで意表をつくのは悪くないが…もっと、頭使わないとな」
「クソー、あんたに目に物見せるつもりだったのに」
「まだまださ、ボクシングは奥深い、やっていればもっと強くなれる」
――――――そう思ってた。
――――――実際俺は強くなっていた。
――――――だけど、強さって腕ぷっしだけじゃないて、あの時、あんたに教えてもらったんだよな。
ある日、俺はラリーとマークで、レストランに行ったんだ。
そこで、事件は起きたんだ。
店の主人らしき人物が、こういった。
「スマンが、ここでの入店は、黒人はお断りなんだ、そこの人以外は入れないよ」
「感じ悪いなぁ…そんなに黒人の入店が嫌かよ、入らせろよ」
マークが、抗議する。
「ああ、嫌だね、犯罪を犯すのは、決まって黒人じゃないか…データだってある」
「データどうだろうと、私達は、あんた達には、被害を与えてないぜ? そのデータと俺たち個人、個人を結びつけるのは、あんた自身の偏見じゃないか」
ラリーが諭すように、店の主人に言う。
―――だが
「うるさい、この間、店に強盗が入ってきたんだよ、そいつ等は黒人の集団だったんだよ、お前らもそいつ等の仲間なんじゃないか? 」
「仲間ではないな、他人だ、そんなに怖いならボディチェックでもしてみれば、いいのさ、私達は銃を携帯してない」
「うるさい、黒人は出てけ!」
「なあ、ラリー、マーク、こんな店なんか後にして別の店に行こうぜ」
「スカー、こんな奴の言う事、聞くのかい? 君やラリーさんは、何もやってないじゃないか!」
「こんな奴だと!!同じ白人の癖に黒人なんかとつるみやがって、恥知らずが!」
店主の対応に憤慨するマークに、ラリーは落ち着けと、そして今度はラリーが言った。
「恥知らずはアンタだ、白人とか黒人とか黄色人とか何の罪を重ねてない者に、自分の偏見でしか接しないのは、人間としての器の小ささの証明でしかない」
「器が小さくて結構、こっちは強盗に入られてるんだ、そっちがその気なら、営業妨害として、警察呼ぶぞ!」
「なーにが警察呼ぶだ、呼んでみればいいじゃないか!このおたんこなす!!」
店主の対応に、ますます憤慨するマークにラリーが背中をさすり、お前も落ち着けと言った。
数分後…
白人の警察官と黒人の警察官が二人やって来た。
「フレイタス署から来ました、何です、営業妨害されてるとか? 」
黒人の警察官が、尋ねると店主はさっきとは打って変わって「そうなんですよ〜、店に入れないと暴れるぞとまで言うんです〜」
「そんな事言ってないじゃないか! ただこの二人も入れて、店で食事させろと言ってるだけだろ」
マークが抗議すると、白人の警察官が「それは本当かね? 」と聞くと店主は、「そ、それは、暴れかねないくらい迫ってくるから…」とおどおどした様子で答えた。
「ほら見ろ、その態度、警察来てから、忠実になりやがって、黒人の警官には従順なのな!さっさと店に入らせて食事させろよ」
マーク…
「御主人、強盗に入られたのは気の毒ですが、我々にも、人権という権利ってものがあります、優しさとか道徳とかの意味ではありません、公正公平というものです、どうか我々にも、食事を摂らせてもらえないか? 」
警察官も、ラリーの言葉に「御主人、レストランに入店させてもいいんじゃない、強盗じゃないだろうし」と言うと「ちっ、仕方ねぇな、お客様が三名だ、ウェイトレス案内しろ」
俺達は、無事、食事にありつけた。
食事は三人とも、ミートスパゲティを頼んだ。
「うん、美味い、あの主人、口はあれだが、飯は旨いな」
マークは美味しさに舌鼓をうっている。
俺は、ラリーに、疑問を投げかける。
「なあ、食事も美味いし、文句はないけれど、あそこまで言い争って入店しなくても、別の店を探せばよかったんじゃないか? 」
ラリーは、フォークを置き、俺に「それは、無理な相談だ、他の店もある程度の年齢に達した黒人には、いちゃもんつけるさ…」
「そうなのか? 」
「ああ、子供連れなら…いや、それでも入店を断る店もある」
この世界は、何とも理不尽な理屈が、まかり通ってるんだと俺はこのとき思った。
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